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上告理由を発見するためには常日頃から最高裁判例を読む習慣が有効:弁護士中山知行/富士市/TEL0545-50-9701

遺言無効確認訴訟における確認の利益の判断にあたり原告の相続分が生前贈与等によりなくなるか否かを考慮することの可否

 昭和56年9月11日最高裁判所第二小法廷判決

裁判要旨    
 一 遺言無効確認訴訟における確認の利益の存否を判断するにあたつては、原則として、原告の相続分が被相続人から受けた生前贈与等によりなくなるか否かを考慮すべきものではない。
二 単に相続分及び遺産分割の方法を指定したにすぎない遺言の無効確認を求める訴は、固有必要的共同訴訟にあたらない。
三 同一の証書に二人の遺言が記載されている場合は、そのうちの一方につき氏名を自書しない方式の違背があるときでも、右遺言は、民法九七五条により禁止された共同遺言にあたる。

https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/351/053351_hanrei.pdf

 

 上告代理人の上告理由第一について

遺言無効確認の訴訟において原告である相続人に確認の利益があるか否かは、遺言の内容によつて定めれば足り、原告が受けた生前贈与等により原告の相続分がなくなるか否かは、将来における遺産分割の時に問題とされるべき事項であることにかんがみると、原則として右確認の利益の存否の判断においては考慮すべきものではないと解するのが相当である。右と同趣旨の原審の判断は正当であり、論旨は採用することができない。

 同第二について

原審の適法に確定した事実関係のもとにおいて、本件遺言無効確認の訴が固有必要的共同訴訟にあたらないとした原審の判断は、正当として是認することができる。
原判決に所論の違法はなく、論旨は、独自の見解に立つて原判決を非難するか、又は原判決の結論に影響を及ぼさない点を論難するものであつて、採用することができない。

 同第三及び第四について

 所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、ひつきよう、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するものにすぎず、採用することができない。

 同第五について

同一の証書に二人の遺言が記載されている場合は、そのうちの一方に氏名を自書しない方式の違背があるときでも、右遺言は、民法九七五条により禁止された共同遺言にあたるものと解するのが相当である。原判決に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。

 

Legal Case Summary:

In a lawsuit confirming the invalidity of a will, when determining the existence or non-existence of a benefit to be confirmed, one should not, as a principle, consider whether the plaintiff's inheritance share disappears due to gifts made during the decedent's lifetime.
A lawsuit simply seeking to confirm the invalidity of a will that merely specifies the method of inheritance and estate division does not constitute an inherently necessary joint lawsuit.
In cases where two wills are written on the same document, even if one of them lacks the required handwritten name, that will is considered a joint will prohibited by Article 975 of the Civil Code.

 

弁護士中山知行