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間接事実についての自白の拘束力

昭和41年9月22日最高裁判所第一小法廷判決

裁判要旨    
いわゆる間接事実についての自白は、自白した当事者を拘束しない。

https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/988/053988_hanrei.pdf

上告人の父Dの被上告人らに対する三〇万円の貸金債権を相続により取得したことを請求の原因とする上告人の本訴請求に対し、被上告人らが、Dは右債権を訴外Eに譲渡した旨抗弁し、右債権譲渡の経緯について、Dは、Eよりその所有にかかる本件建物を代金七〇万円で買い受けたが、右代金決済の方法としてDが被上告人らに対して有する本件債権をEに譲渡した旨主張し、上告人が、第一審において右売買の事実を認めながら、原審において右自白は真実に反しかつ錯誤に基づくものであるからこれを取り消すと主張し、被上告人らが、右自白の取消に異議を留めたことは記録上明らかである。

しかし、被上告人らの前記抗弁における主要事実は「債権の譲渡」であつて、前記自白にかかる「本件建物の売買」は、右主要事実認定の資料となりうべき、いわゆる間接事実にすぎない。かかる間接事実についての自白は、裁判所を拘束しないのはもちろん、自白した当事者を拘束するものでもないと解するのが相当である。
しかるに、原審は、前記自白の取消は許されないものと判断し、自白によつて、DがEより本件建物を代金七〇万円で買い受けたという事実を確定し、右事実を資料として前記主要事実を認定したのであつて、原判決には、証拠資料たりえないものを事実認定の用に供した違法があり、右違法が原判決に影響を及ぼすことは明らかであるから、論旨はこの点において理由があり、原判決は破棄を免れない。