最高裁判例の勉強部屋:毎日数個の最高裁判例を読む

上告理由を発見するためには常日頃から最高裁判例を読む習慣が有効:弁護士中山知行/富士市/TEL0545-50-9701

2023-04-01から1ヶ月間の記事一覧

株式会社の従業員らが営業成績を上げる目的で架空の売上げを計上したため有価証券報告書に不実の記載がされ,株主が損害を被ったことにつき,会社の代表者に従業員らによる架空売上げの計上を防止するためのリスク管理体制構築義務違反の過失がないとされた事例

平成21年7月9日最高裁判所第一小法廷判決 会社法 (代表者の行為についての損害賠償責任) 第三百五十条 株式会社は、代表取締役その他の代表者がその職務を行うについて第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。 裁判要旨 株式会社の従業員らが営業成績を…

再生債務者に対して債務を負担する者が自らと完全親会社を同じくする他の株式会社が有する再生債権を自働債権としてする相殺は,民事再生法92条1項によりすることができる相殺に該当するか

平成28年7月8日最高裁判所第二小法廷判決 裁判要旨 再生債務者に対して債務を負担する者が,当該債務に係る債権を受働債権とし,自らと完全親会社を同じくする他の株式会社が有する再生債権を自働債権としてする相殺は,これをすることができる旨の合意があ…

医療法人と医師との間の雇用契約において時間外労働等に対する割増賃金を年俸に含める旨の合意がされていたとしても,当該年俸の支払により時間外労働等に対する割増賃金が支払われたということはできないとされた事例

平成29年7月7日最高裁判所第二小法廷判決 裁判要旨 医療法人と医師との間の雇用契約において時間外労働等に対する割増賃金を年俸に含める旨の合意がされていたとしても,当該年俸のうち時間外労働等に対する割増賃金に当たる部分が明らかにされておらず,通…

建物の設計者,施工者又は工事監理者が,建築された建物の瑕疵により生命,身体又は財産を侵害された者に対し不法行為責任を負う場合

平成19年7月6日最高裁判所第二小法廷判決 裁判要旨 建物の建築に携わる設計者,施工者及び工事監理者は,建物の建築に当たり,契約関係にない居住者を含む建物利用者,隣人,通行人等に対する関係でも,当該建物に建物としての基本的な安全性が欠けることが…

会社法182条の4第1項に基づき株式の買取請求をした者が同法182条の5第5項に基づく支払を受けた場合における上記の者の同法318条4項にいう「債権者」該当性

令和3年7月5日最高裁判所第二小法廷判決 裁判要旨 会社法182条の4第1項に基づき株式の買取請求をした者は,同法182条の5第5項に基づく支払を受けた場合であっても,上記株式の価格につき会社との協議が調い又はその決定に係る裁判が確定するまでは…

被疑者に対する長時間の取調べが任意捜査として許容される限度を逸脱したものとまではいえないとされた事例(反対意見がある)

平成元年7月4日最高裁判所第三小法廷決定 裁判要旨 午後一一時過ぎに任意同行の上翌日午後九時二五分ころまで続けられた被疑者に対する取調べは、特段の事情のない限り、容易に是認できないが、取調べが本人の積極的な承諾を得て参考人からの事情聴取として…

いわゆる同族会社の代表者で実質的な経営者でもある破産者が当該会社のためにした保証又は担保の供与が破産法七二条五号にいう無償行為に当たる場合

昭和62年7月3日最高裁判所第二小法廷判決 裁判要旨 一 破産者が義務なくして他人のためにした保証又は担保の供与は、債権者の主たる債務者に対する出捐の直接の原因をなす場合であつても、破産者がその行為の対価として経済的利益を受けない限り、破産法七二…

制限超過利息等についての不当利得返還請求権に係る破産債権が確定した場合において当該制限超過利息等の受領の日が属する事業年度の益金の額を減額する計算方法と一般に公正妥当と認められる会計処理の基準

令和2年7月2日最高裁判所第一小法廷判決 裁判要旨 法人が受領した制限超過利息等を益金の額に算入して法人税の申告をし,その後の事業年度に当該制限超過利息等についての不当利得返還請求権に係る破産債権が破産手続により確定した場合において,当該制限超…

株式会社の株式の相当数を保有する株主が当該株式会社の株式等の公開買付けを行い,その後に当該株式会社の株式を全部取得条項付種類株式とし,当該株式会社が同株式の全部を取得する取引において,上記公開買付けが一般に公正と認められる手続により行われた場合における会社法(平成26年法律第90号による改正前のもの)172条1項にいう「取得の価格」

平成28年7月1日最高裁判所第一小法廷決定 裁判要旨 株式会社の株式の相当数を保有する株主が当該株式会社の株式等の公開買付けを行い,その後に当該株式会社の株式を全部取得条項付種類株式とし,当該株式会社が同株式の全部を取得する取引において,独立し…

ふるさと納税制度に係る平成31年総務省告示第179号2条3号の規定のうち,地方税法37条の2及び314条の7を改正する平成31年法律第2号の規定の施行前における寄附金の募集及び受領について定める部分の法適合性

令和2年6月30日最高裁判所第三小法廷判決 裁判要旨 ふるさと納税制度に係る平成31年総務省告示第179号2条3号の規定のうち,地方税法37条の2及び314条の7を改正する平成31年法律第2号の規定の施行前における寄附金の募集及び受領について定…

宅地建物取引業法3条1項の免許を受けない者が宅地建物取引業を営むために免許を受けて宅地建物取引業を営む者からその名義を借り,当該名義を借りてされた取引による利益を両者で分配する旨の合意の効力

令和3年6月29日最高裁判所第三小法廷判決 裁判要旨 宅地建物取引業法3条1項の免許を受けない者が宅地建物取引業を営むために免許を受けて宅地建物取引業を営む者からその名義を借り,当該名義を借りてされた取引による利益を両者で分配する旨の合意は,同…

学術論文の学術雑誌への掲載が薬事法(平成25年法律第84号による改正前のもの)66条1項の規制する行為に当たらないとされた事例

令和3年6月28日最高裁判所第一小法廷決定 裁判要旨 1 薬事法(平成25年法律第84号による改正前のもの)66条1項の規制する「記事を広告し,記述し,又は流布」する行為は,特定の医薬品等に関し,当該医薬品等の購入・処方等を促すための手段として,…

 会社法423条1項に基づく損害賠償請求訴訟において原告の設置した取締役責任調査委員会の委員であった弁護士が原告の訴訟代理人として行う訴訟行為を弁護士法25条2号及び4号の類推適用により排除することはできないとされた事例

令和4年6月27日最高裁判所第一小法廷決定 裁判要旨 株式会社である原告の設置した取締役責任調査委員会により、原告の取締役であった被告に対する事情聴取が行われた後、原告が、被告に対し、上記委員会の委員であった弁護士を訴訟代理人として、会社法42…

共犯関係が解消していないとされた事例

平成元年6月26日最高裁判所第一小法廷決定 裁判要旨 甲が、乙と共謀のうえ、こもごも丙に暴行を加えたのち、現場から立ち去るに際し、乙において丙に対しなお暴行を加えるおそれが消滅していなかつたのに、格別これを防止する措置を講じなかつたときは、甲乙…

正当防衛に当たる暴行及びこれと時間的,場所的に連続して行われた暴行について,両暴行を全体的に考察して1個の過剰防衛の成立を認めることはできないとされた事例

平成20年6月25日最高裁判所第一小法廷決定 裁判要旨 相手方の急迫不正の侵害に対し,正当防衛に当たる暴行(以下「第1暴行」という。)を加えて同人を転倒させた被告人が,これと時間的,場所的に連続して暴行(以下「第2暴行」という。)を加えた場合にお…

インターネットを利用して短文の投稿をすることができる情報ネットワークにおいてある者のプライバシーに属する事実を摘示するメッセージが投稿された場合にその者が上記情報ネットワークの運営者に対して上記メッセージの削除を求めることができるとされた事例

令和4年6月24日最高裁判所第二小法廷判決 裁判要旨 インターネットを利用して短文の投稿をすることができる情報ネットワークにおいて、ある者が建造物侵入の被疑事実により逮捕されたというその者のプライバシーに属する事実を摘示するメッセージの投稿がさ…

民法750条及び戸籍法74条1号と憲法24条

令和3年6月23日最高裁判所大法廷決定 裁判要旨 民法750条及び戸籍法74条1号は,憲法24条に違反しない。(補足意見,意見及び反対意見がある。) https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=90412 https://www.courts.go.jp/app/files/hanre…

複数年度分の普通徴収に係る個人の住民税を差押えに係る地方税とする滞納処分において当該差押えに係る地方税に配当された金銭であってその後に減額賦課決定がされた結果配当時に存在しなかったこととなる年度分の住民税に充当されていたものの帰すう

令和3年6月22日最高裁判所第三小法廷判決 裁判要旨 複数年度分の普通徴収に係る個人の住民税(市町村民税及び道府県民税)を差押えに係る地方税とする滞納処分において,当該差押えに係る地方税に配当された金銭であって,その後に減額賦課決定がされた結果…

担保不動産競売の債務者が免責許可の決定を受け,同競売の基礎となった担保権の被担保債権が上記決定の効力を受ける場合,当該債務者の相続人は,民事執行法188条において準用する同法68条にいう「債務者」に当たらない。

令和3年6月21日最高裁判所第一小法廷決定 裁判要旨 担保不動産競売の債務者が免責許可の決定を受け,同競売の基礎となった担保権の被担保債権が上記決定の効力を受ける場合,当該債務者の相続人は,民事執行法188条において準用する同法68条にいう「債…

主婦を強姦目的で殺害した上姦淫しさらにその場で生後11か月の同女の長女をも殺害するなどした当時18歳の被告人につき第1審判決の無期懲役の科刑を維持した控訴審判決が量刑不当として破棄された事例

平成18年6月20日最高裁判所第三小法廷判決 判示事項 主婦を強姦目的で殺害した上姦淫しさらにその場で生後11か月の同女の長女をも殺害するなどした当時18歳の被告人につき第1審判決の無期懲役の科刑を維持した控訴審判決が量刑不当として破棄された事例…

連帯債務者の一人が死亡し、その相続人が数人ある場合に、相続人らは、被相続人の債務の分割されたものを承継し、各自その承継した範囲において、本来の債務者とともに連帯債務者となると解すべきである。

昭和34年6月19日最高裁判所第二小法廷判決 裁判要旨 連帯債務者の一人が死亡し、その相続人が数人ある場合に、相続人らは、被相続人の債務の分割されたものを承継し、各自その承継した範囲において、本来の債務者とともに連帯債務者となると解すべきである。…

共有物分割請求訴訟

昭和46年6月18日最高裁判所第二小法廷判決 裁判要旨 一、民法二五八条一項にいう「共有者ノ協議調ハサルトキ」とは、共有者の一部に共有物分割の協議に応ずる意思がないため共有者全員において協議をすることができない場合を含むものであつて、現実に協議を…

国が、津波による原子力発電所の事故を防ぐために電気事業法(平成24年法律第47号による改正前のもの)40条に基づく規制権限を行使しなかったことを理由として国家賠償法1条1項に基づく損害賠償責任を負うとはいえないとされた事例

令和4年6月17日最高裁判所第二小法廷判決 注:結果回避可能性がないから予見可能性の有無にかかわらず,因果関係がないという判決です。 裁判要旨 電力会社が設置し運営する原子力発電所の原子炉に係る建屋の敷地に地震に伴う津波が到来し、上記建屋の中に海…

 刑法36条1項にいう「急迫不正の侵害」が終了していないとされた事例   全体として過剰防衛に当たるとされた事例

平成9年6月16日最高裁判所第二小法廷判決 裁判要旨 一 文化住宅の二階便所にいた被告人を鉄パイプで殴打した上逃げ出した後を追い掛けて殴り掛かろうとしていた相手方を、被告人が二階通路から外側の道路上に転落させる行為に及んだ当時、相手方において、勢…

刑事施設に収容されている者が収容中に受けた診療に関する保有個人情報は,行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律45条1項所定の保有個人情報に当たらない。

令和3年6月15日最高裁判所第三小法廷判決 裁判要旨 刑事施設に収容されている者が収容中に受けた診療に関する保有個人情報は,行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律45条1項所定の保有個人情報に当たらない。(補足意見がある。) https://www.co…

地方公共団体の職員が暴行等を理由とする懲戒処分の停職期間中に同僚等に対して行った同処分に関する働き掛けを理由とする停職6月の懲戒処分が裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用した違法なものであるとした原審の判断に違法があるとされた事例

令和4年6月14日最高裁判所第三小法廷判決 裁判要旨 地方公共団体の職員が、上司及び部下に対する暴行等を理由とする停職2月の懲戒処分の停職期間中に、上記暴行等の一部についての事情を知っていた同僚及び上記暴行の被害者の1人である部下に対して行った…

被疑者の依頼により弁護人となろうとする者から被疑者の逮捕直後に初回の接見の申出を受けた捜査機関が接見の日時を翌日に指定した措置が国家賠償法一条一項にいう違法な行為に当たるとされた事例

平成12年6月13日最高裁判所第三小法廷判決 裁判要旨 一 弁護人を選任することができる者の依頼により弁護人となろうとする者から被疑者の逮捕直後に初回の接見の申出を受けた捜査機関は、即時又は近接した時点での接見を認めても接見の時間を指定すれば捜査…

曲線での速度超過により列車が脱線転覆し多数の乗客が死傷した鉄道事故について,鉄道会社の歴代社長らに業務上過失致死傷罪が成立しないとされた事例

平成29年6月12日最高裁判所第二小法廷決定 裁判要旨 快速列車の運転士が制限速度を大幅に超過し,転覆限界速度をも超える速度で同列車を曲線(本件曲線)に進入させたことにより同列車が脱線転覆し,多数の乗客が死傷した鉄道事故について,同事故以前の法令…

遺産分割協議と詐害行為取消権

平成11年6月11日最高裁判所第二小法廷判決 裁判要旨 共同相続人の間で成立した遺産分割協議は、詐害行為取消権行使の対象となる。 https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=52217 https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/217/052217_hanre…

有限会社の取締役が会社の破産宣告後にした放火による建物の焼失が火災保険約款の免責条項所定の「取締役」の故意による事故招致に当たるとされた事例

平成16年6月10日最高裁判所第一小法廷判決 裁判要旨 1 有限会社の取締役は,会社が破産宣告を受けた後であっても,火災保険の保険契約者又は被保険者の取締役の故意等によって生じた損害に対しては保険金を支払わない旨の約款中の免責条項にいう「取締役」…