最高裁判例の勉強部屋:毎日数個の最高裁判例を読む

上告理由を発見するためには常日頃から最高裁判例を読む習慣が有効:弁護士中山知行/富士市/TEL0545-50-9701

2023-04-01から1ヶ月間の記事一覧

他人の物の非占有者が業務上占有者と共謀して横領した場合における非占有者に対する公訴時効の期間

令和4年6月9日最高裁判所第一小法廷判決 裁判要旨 他人の物の非占有者が業務上占有者と共謀して横領した場合、非占有者に対する公訴時効の期間は、刑法252条1項の横領罪の法定刑である5年以下の懲役について定められた5年(刑訴法250条2項5号)で…

他人の肖像,氏名等を含む商標について商標登録を受けるために必要な当該他人の承諾の有無を判断する基準時

平成16年6月8日最高裁判所第三小法廷判決 裁判要旨 他人の肖像又は他人の氏名,名称,その著名な略称等を含む商標について商標登録を受けるために必要な当該他人の承諾の有無を判断する基準時は,商標登録査定又は拒絶査定の時(拒絶査定に対する審判が請求…

公にされている処分基準の適用関係を示さずにされた建築士法に基づく一級建築士免許取消処分が,行政手続法14条1項本文の定める理由提示の要件を欠き,違法であるとされた事例

平成23年6月7日最高裁判所第三小法廷判決 裁判要旨 建築士法(平成18年法律第92号による改正前のもの)10条1項2号及び3号に基づいてされた一級建築士免許取消処分の通知書において,処分の理由として,名宛人が,複数の建築物の設計者として,建築…

いわゆる明示的一部請求の訴えに係る訴訟において,債権の一部消滅の抗弁に理由があると判断されたため判決において上記債権の総額の認定がされた場合における,残部についての消滅時効の中断

平成25年6月6日最高裁判所第一小法廷判決 裁判要旨 1 数量的に可分な債権の一部についてのみ判決を求める旨を明示した訴えに係る訴訟において,債権の一部が消滅している旨の抗弁に理由があると判断されたため,判決において上記債権の総額の認定がされたと…

再生債務者が支払の停止の前に再生債権者から購入した投資信託受益権に係る再生債権者の再生債務者に対する解約金の支払債務の負担が,民事再生法93条2項2号にいう「前に生じた原因」に基づく場合に当たらず,上記支払債務に係る債権を受働債権とする相殺が許されないとされた事例

平成26年6月5日最高裁判所第一小法廷判決 裁判要旨 再生債務者Xが,その支払の停止の前に,投資信託委託会社と信託会社との信託契約に基づき設定された投資信託の受益権をその募集販売委託を受けた再生債権者Yから購入し,上記信託契約等に基づき,上記受…

被災者生活再建支援法に基づき被災者生活再建支援金の支給決定をした被災者生活再建支援法人が支給要件の認定に誤りがあることを理由として当該決定を取り消すことができるとされた事例

令和3年6月4日最高裁判所第二小法廷判決 裁判要旨 東日本大震災により被害を受けた世帯が大規模半壊世帯に該当するとの認定の下に被災者生活再建支援法に基づき被災者生活再建支援金の支給決定がされた場合において,当該世帯の居住する住宅の被害の程度が客…

いわゆる花押を書くことと民法968条1項の押印の要件

平成28年6月3日最高裁判所第二小法廷判決 裁判要旨 いわゆる花押を書くことは,民法968条1項の押印の要件を満たさない。 https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=85930 https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/930/085930_hanrei.pdf…

外国国家が発行した円建て債券に係る償還等請求訴訟につき,当該債券の管理会社が任意的訴訟担当の要件を満たすものとして原告適格を有するとされた事例

平成28年6月2日最高裁判所第一小法廷判決 裁判要旨 外国国家Yが発行したいわゆるソブリン債である円建て債券に係る償還等請求訴訟について,当該債券の管理会社であるXらは,次の⑴~⑷など判示の事情の下では,当該債券の債権者Aらのための任意的訴訟担当…

無期契約労働者に対して皆勤手当を支給する一方で有期契約労働者に対してこれを支給しないという労働条件の相違が,労働契約法20条にいう不合理と認められるものに当たるとされた事例

平成30年6月1日最高裁判所第二小法廷判決 裁判要旨 1 有期契約労働者と無期契約労働者との労働条件の相違が労働契約法20条に違反する場合であっても,同条の効力により当該有期契約労働者の労働条件が比較の対象である無期契約労働者の労働条件と同一のも…

国家公務員法一〇九条一二号、一〇〇条一項にいう秘密とは、非公知の事実であつて、実質的にもそれを秘密として保護するに値するものをいい、その判定は、司法判断に服する。

昭和53年5月31日最高裁判所第一小法廷決定 裁判要旨 一 国家公務員法一〇九条一二号、一〇〇条一項にいう秘密とは、非公知の事実であつて、実質的にもそれを秘密として保護するに値するものをいい、その判定は、司法判断に服する。二 昭和四六年五月二八日に…

公立高等学校の校長が教諭に対し卒業式における国歌斉唱の際に国旗に向かって起立し国歌を斉唱することを命じた職務命令が憲法19条に違反しないとされた事例

平成23年5月30日最高裁判所第二小法廷判決 裁判要旨 公立高等学校の校長が教諭に対し卒業式における国歌斉唱の際に国旗に向かって起立し国歌を斉唱することを命じた職務命令は,次の(1)〜(3)など判示の事情の下では,当該教諭の思想及び良心の自由を侵すもの…

 将来の給付の訴えを提起することのできる請求権としての適格を有しないものとされた事例

平成19年5月29日最高裁判所第三小法廷判決 裁判要旨 飛行場において離着陸する航空機の発する騒音等により周辺住民らが精神的又は身体的被害等を被っていることを理由とする損害賠償請求権のうち事実審の口頭弁論終結の日の翌日以降の分は,判決言渡日までの…

保証人が主たる債務者の破産手続開始前にその委託を受けないで締結した保証契約に基づき同手続開始後に弁済をした場合に保証人が取得する求償権の破産債権該当性

平成24年5月28日最高裁判所第二小法廷判決 裁判要旨 1 保証人が主たる債務者の破産手続開始前にその委託を受けないで締結した保証契約に基づき同手続開始後に弁済をした場合において,保証人が主たる債務者である破産者に対して取得する求償権は,破産債権…

財産分与としてされた不動産の譲渡は、譲渡所得課税の対象となる。

昭和50年5月27日最高裁判所第三小法廷判決 裁判要旨 財産分与としてされた不動産の譲渡は、譲渡所得課税の対象となる。 https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=52096 https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/096/052096_hanrei.pdf 譲渡…

甲が丁の強迫により消費貸借契約の借主となり貸主乙に指示して貸付金を丙に給付させた後に右強迫を理由に契約を取り消した場合の乙から甲に対する不当利得返還請求につき甲が右給付により利益を受けなかったものとされた事例

平成10年5月26日最高裁判所第三小法廷判決 裁判要旨 甲が丁の強迫により消費貸借契約の借主となり貸主乙に指示して貸付金を丙に給付させた後に右強迫を理由に契約を取り消したが、甲と丙との間には事前に何らの法律上又は事実上の関係はなく、甲が丁の言うま…

民訴法118条3号の要件を具備しない懲罰的損害賠償としての金員の支払を命じた部分が含まれる外国裁判所の判決に係る債権について弁済がされた場合に,その弁済が上記部分に係る債権に充当されたものとして上記判決についての「執行判決」をすることの可否

令和3年5月25日最高裁判所第三小法廷判決 裁判要旨 民訴法118条3号の要件を具備しない懲罰的損害賠償としての金員の支払を命じた部分が含まれる外国裁判所の判決に係る債権について弁済がされた場合,その弁済が上記外国裁判所の強制執行手続においてさ…

被保護者の死亡と生活保護処分に関する裁決取消訴訟承継の成否

昭和42年5月24日最高裁判所大法廷判決 裁判要旨 生活保護処分に関する裁決の取消訴訟は、被保護者の死亡により、当然終了する。 https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=54970 https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/970/054970_hanrei.…

共同抵当の目的である債務者所有の甲不動産及び物上保証人所有の乙不動産に債権者を異にする後順位抵当権が設定され乙不動産が先に競売された場合に甲不動産から弁済を受けるときにおける甲不動産の後順位抵当権者と乙不動産の後順位抵当権者の優劣

昭和60年5月23日最高裁判所第一小法廷判決 裁判要旨 一 共同抵当の目的である債務者所有の甲不動産及び物上保証人所有の乙不動産にそれぞれ債権者を異にする後順位抵当権が設定されている場合において、乙不動産が先に競売されて一番抵当権者が弁済を受けた…

職務発明について特許を受ける権利等を使用者等に承継させた従業者等が勤務規則その他の定めによる対価の額が特許法35条3項及び4項の規定に従って定められる相当の対価の額に満たないときに不足額を請求することの可否

平成15年4月22日最高裁判所第三小法廷判決 裁判要旨 1 使用者等があらかじめ定める勤務規則その他の定めにより職務発明について特許を受ける権利又は特許権を使用者等に承継させた従業者等は,当該勤務規則その他の定めに使用者等が従業者等に対して支払う…

地方教育行政の組織及び運営に関する法律五四条二項と昭和三六年度全国中学校一せい学力調査の手続上の適法性  憲法と子どもに対する教育内容の決定権能の帰属

昭和51年5月21日最高裁判所大法廷判決 裁判要旨 一、地方教育行政の組織及び運営に関する法律五四条二項は、文部大臣に対し、昭和三六年度全国中学生一せい学力調査のような調査の実施を教育委員会に要求する権限を与えるものではないが、右規定を根拠とする…

 被告人が,自らの暴行により相手方の攻撃を招き,これに対する反撃としてした傷害行為について,正当防衛が否定された事例

平成20年5月20日最高裁判所第二小法廷決定 裁判要旨 相手方から攻撃された被告人がその反撃として傷害行為に及んだが,被告人は,相手方の攻撃に先立ち,相手方に対して暴行を加えているのであって,相手方の攻撃は,被告人の暴行に触発された,その直後にお…

労働基準法114条の付加金の請求の価額は,同条所定の未払金の請求に係る訴訟の目的の価額に算入されるか

平成27年5月19日最高裁判所第三小法廷決定 裁判要旨 労働基準法114条の付加金の請求については,同条所定の未払金の請求に係る訴訟において同請求とともにされるときは,民訴法9条2項にいう訴訟の附帯の目的である損害賠償又は違約金の請求に含まれるも…

不法行為に基づく損害賠償債務の遅延損害金を民法405条の適用又は類推適用により元本に組み入れることの可否

令和4年1月18日最高裁判所第三小法廷判決 裁判要旨 不法行為に基づく損害賠償債務の遅延損害金は,民法405条の適用又は類推適用により元本に組み入れることはできない。 https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=90853 https://www.courts.go.…

労働大臣が建設現場における石綿関連疾患の発生防止のために労働安全衛生法に基づく規制権限を行使しなかったことが屋内の建設作業に従事して石綿粉じんにばく露した労働者との関係において国家賠償法1条1項の適用上違法であるとされた事例

令和3年5月17日最高裁判所第一小法廷判決 判示事項 1 労働大臣が建設現場における石綿関連疾患の発生防止のために労働安全衛生法に基づく規制権限を行使しなかったことが屋内の建設作業に従事して石綿粉じんにばく露した労働者との関係において国家賠償法1…

自筆遺言証書における押印と指印

平成元年2月16日最高裁判所第一小法廷判決 裁判要旨 自筆遺言証書における押印は、指印をもつて足りる。 https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=52210 https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/210/052210_hanrei.pdf 自筆証書によつて遺…

 名誉毀損の成否が問題となっている法的な見解の表明と意見ないし論評の表明

平成16年7月15日最高裁判所第一小法廷判決 裁判要旨 名誉毀損の成否が問題となっている法的な見解の表明は,判決等により裁判所が判断を示すことができる事項に係るものであっても,事実を摘示するものとはいえず,意見ないし論評の表明に当たる。 https://w…

県知事が管弦楽団による演奏会に出席したことが公務に該当するとされた事例

令和3年5月14日最高裁判所第二小法廷判決 裁判要旨 県知事が管弦楽団による演奏会に出席したことは,県がその事業の一環として当該演奏会を共催したものであるなど判示の事情の下では,公務に該当する。 https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=…

原判決認定の事実(第二審判定理由参照)に基く社宅の使用関係については、借家法の適用はないと解すべきである。

昭和30年5月13日最高裁判所第二小法廷判決 原判決認定の事実(第二審判定理由参照)に基く社宅の使用関係については、借家法の適用はないと解すべきである。 https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=57452 https://www.courts.go.jp/app/files/h…

私文書の作成名義人の印影が当該名義人の印章によつて顕出された場合と文書の真正の推定。

昭和39年5月12日最高裁判所第三小法廷判決 裁判要旨 私文書の作成名義人の印影が当該名義人の印章によつて顕出されたものであるときは、反証のないかぎり、該印影は本人の意思に基づいて顕出されたものと事実上推定するのを相当とするから、民訴法第三二六条…

業務上過失致死事件につき禁錮10月の実刑が破棄されて執行猶予が付された事例:単なる量刑不当の主張でも最高裁は職権で破棄自判することがあり得る例

平成2年5月11日最高裁判所第二小法廷判決 業務上過失致死事件につき禁錮10月の実刑が破棄されて執行猶予が付された事例 https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=57877 https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/877/057877_hanrei.pdf 主…