最高裁判例の勉強部屋:毎日数個の最高裁判例を読む

上告理由を発見するためには常日頃から最高裁判例を読む習慣が有効:弁護士中山知行/富士市/TEL0545-50-9701

2023-05-01から1ヶ月間の記事一覧

 公有水面埋立法に基づく埋立免許を受けて埋立工事が完成した後竣功認可がされていない埋立地が土地として私法上所有権の客体になる場合

平成17年12月16日最高裁判所第二小法廷判決 裁判要旨 公有水面埋立法に基づく埋立免許を受けて埋立工事が完成した後竣功認可がされていない埋立地であっても,長年にわたり当該埋立地が事実上公の目的に使用されることもなく放置され,公共用財産としての形…

強制わいせつ罪等を非親告罪とした「刑法の一部を改正する法律」(平成29年法律第72号)の経過措置を定めた同法附則2条2項と憲法39条

令和2年3月10日最高裁判所第三小法廷判決 裁判要旨 強制わいせつ罪等を非親告罪とした「刑法の一部を改正する法律」(平成29年法律第72号)の経過措置として,同法により非親告罪とされた罪であって同法の施行前に犯したものについて,同法の施行の際既…

 都市基盤整備事業を行う法人が特定の地域において指名競争入札の方法により発注する一定規模以上の土木工事について複数のゼネコンがした受注予定者の決定等に関する合意が,独禁法(平成14年法律第47号による改正前のもの)2条6項所定の「不当な取引制限」に当たるとされた事例

平成24年2月20日最高裁判所第一小法廷判決 裁判要旨 市町村から委託を受けるなどして都市基盤整備事業を行う法人が特定の地域において指名競争入札の方法により発注する一定規模以上の土木工事について入札参加資格を有する複数のゼネコン(広域総合建設業者…

今状に基づく捜索の現場で警察官が被告人に暴行を加えた違法があってもそれ以前に発見されていた覚せい剤の証拠能力は否定されないとされた事例

平成8年10月29日最高裁判所第三小法廷決定 裁判要旨 今状に基づく捜索の現場で警察官が被告人に暴行を加えた違法があっても、その暴行の時点は証拠物たる覚せい剤発見の後であり、被告人の発言に触発されて行われたものであって、証拠物の発見を目的とし捜索…

破産手続開始前に成立した第三者のためにする生命保険契約に基づき破産者である死亡保険金受取人が有する死亡保険金請求権と破産財団への帰属

平成28年4月28日最高裁判所第一小法廷判決 裁判要旨 破産手続開始前に成立した第三者のためにする生命保険契約に基づき破産者である死亡保険金受取人が有する死亡保険金請求権は,破産法34条2項にいう「破産者が破産手続開始前に生じた原因に基づいて行う…

 検察審査会法41条の6第1項所定の検察審査会による起訴をすべき旨の議決の適否につき行政事件訴訟を提起して争い,これを本案とする行政事件訴訟法25条2項の執行停止の申立てをすることができるか

平成22年11月25日最高裁判所第一小法廷決定 裁判要旨 検察審査会法41条の6第1項所定の検察審査会による起訴をすべき旨の議決の適否については,行政事件訴訟を提起して争うことはできず,これを本案とする行政事件訴訟法25条2項の執行停止の申立てを…

地代等自動改定特約と借地借家法11条1項

平成15年6月12日最高裁判所第一小法廷判決 裁判要旨 地代等自動改定特約において地代等の改定基準を定めるに当たって基礎とされていた事情が失われることにより,同特約によって地代等の額を定めることが借地借家法11条1項の規定の趣旨に照らして不相当な…

責任を弁識する能力のない未成年者の行為により火災が発生した場合における監督義務者の損害賠償責任と失火の責任に関する法律

平成7年1月24日最高裁判所第三小法廷判決 裁判要旨 責任を弁識する能力のない未成年者の行為により火災が発生した場合において、失火の責任に関する法律にいう重大な過失の有無は、未成年者の監督義務者の監督について考慮され、右監督義務者は、その監督に…

 売主から委託を受けてマンションの専有部分の販売に関する一切の事務を行っていた宅地建物取引業者に専有部分内に設置された防火戸の操作方法等につき買主に対して説明すべき信義則上の義務があるとされた事例

平成17年9月16日最高裁判所第二小法廷判決 裁判要旨 防火設備の一つとして重要な役割を果たし得る防火戸が室内に設置されたマンションの専有部分の販売に際し,防火戸の電源スイッチが一見してそれとは分かりにくい場所に設置され,それが切られた状態で専有…

 傷害致死被告事件において接見等禁止の裁判に対する準抗告を棄却した原決定に刑訴法81条,426条の解釈適用を誤った違法があるとされた事例

平成31年3月13日最高裁判所第三小法廷決定 判示事項 傷害致死被告事件において接見等禁止の裁判に対する準抗告を棄却した原決定に刑訴法81条,426条の解釈適用を誤った違法があるとされた事例 https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/525/088525…

情報公開法に基づく行政文書の開示請求に対する不開示決定の取消訴訟において,不開示とされた文書を検証の目的として被告にその提示を命ずることの許否

平成21年1月15日最高裁判所第一小法廷決定 裁判要旨 情報公開法に基づく行政文書の開示請求に対する不開示決定の取消訴訟において,不開示とされた文書を目的とする検証を被告に受忍義務を負わせて行うことは,原告が検証への立会権を放棄するなどしたとして…

捜査機関への申告内容に虚偽が含まれていた事案につき刑法42条1項の自首が成立するとされた事例

平成13年2月9日最高裁判所第三小法廷決定 裁判要旨 けん銃を適合実包と共に携帯して所持し発射した者が,捜査機関に発覚する前に,これらの犯行に及んだことを捜査機関に申告した場合は,その際,使用したけん銃について虚偽の事実を述べるなどしたとしても…

良好な景観の恵沢を享受する利益に対する違法な侵害に当たるといえるために必要な条件

平成18年3月30日最高裁判所第一小法廷判決 裁判要旨 1 良好な景観に近接する地域内に居住する者が有するその景観の恵沢を享受する利益は,法律上保護に値するものと解するのが相当である。2 ある行為が良好な景観の恵沢を享受する利益に対する違法な侵害に…

 子の血縁上の父であると主張する者が提起した戸籍上の父と子との間の親子関係不存在の確認を求める訴えの係属中に子を第三者の特別養子とする審判が確定した場合につき訴えの利益を否定した原審の判断に違法があるとされた事例

平成10年7月14日最高裁判所第三小法廷判決 裁判要旨 子の血縁上の父であると主張する甲が戸籍上の父と子との間の親子関係不存在の確認を求める訴えを提起したところ、右訴えの帰すうが定まる前に右事情を知る審判官によって子を第三者の特別養子とする審判が…

「相続させる」趣旨の遺言による不動産の取得と登記

平成14年6月10日最高裁判所第二小法廷判決 裁判要旨 「相続させる」趣旨の遺言による不動産の権利の取得については,登記なくして第三者に対抗することができる。 https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/433/062433_hanrei.pdf 1 原審の認定によれ…

同一の建物に二重の表示登記がされた場合における先行の表示登記の申請人ないしその登記を基礎とする所有権保存登記の名義人の地位に基づく後行の表示登記ないしその登記を基礎とする所有権保存登記の抹消請求の可否

平成3年7月18日最高裁判所第一小法廷判決 裁判要旨 同一の建物に二重の表示登記がされた場合において、先行の表示登記の申請人ないしその登記を基礎とする所有権保存登記の名義人は、その地位に基づいて、後行の表示登記ないしその登記を基礎とする所有権保…

農業協同組合の監事が組合を代表して理事に対してする訴訟の提起と組合規約中の訴訟の提起に理事会の決議を要する旨の規定の適用の有無

平成9年12月16日最高裁判所第三小法廷判決 裁判要旨 一 農業協同組合の監事が組合を代表して理事に対する訴訟を提起する場合には、組合規約中の訴訟の提起に理事会の決議を要する旨の規定は適用されない。二 農業協同組合と理事との間の訴訟の係属中に理事が…

 刑法46条2項により刑を科さないとされた公訴事実に係る未決勾留日数の算入

平成18年8月31日最高裁判所第三小法廷決定 裁判要旨 併合罪関係にある数罪を併合審理して刑を言い渡す場合,刑法46条2項により刑を科さないとされた公訴事実に係る未決勾留日数を非勾留事実に係る罪に対する無期懲役刑及び罰金刑にそれぞれ算入することが…

他主占有者の相続人が独自の占有に基づく取得時効の成立を主張する場合における所有の意思の立証責任

平成8年11月12日最高裁判所第三小法廷判決 裁判要旨 一 他主占有者の相続人が独自の占有に基づく取得時効の成立を主張する場合には、相続人において、その事実的支配が外形的客観的にみて独自の所有の意思に基づくものと解される事情を証明すべきである。 二…

裁判官が公訴棄却の判決をし又はその判決に至る手続に関与したことと再起訴後の審理における刑訴法20条7号本文所定の除斥原因

平成17年8月30日最高裁判所第一小法廷決定 裁判要旨 裁判官が公訴棄却の判決をし,又はその判決に至る手続に関与したことは,その手続において再起訴後の第1審で採用された証拠又はそれと実質的に同一の証拠が取り調べられていても,再起訴後の審理において…

著しく不公正な方法によってされた新株発行の効力

平成6年7月14日最高裁判所第一小法廷判決 裁判要旨 株式会社を代表する権限のある取締役によって行われた新株の発行は、それが著しく不公正な方法によってされたものであり、かつ、右会社の取締役がその新株を引き受けて現に保有し、右会社が小規模で閉鎖的…

公立小学校3年の児童が,朝自習の時間帯に離席して,ロッカーから落ちていたベストのほこりを払おうとしてこれを頭上で振り回したところ,別の児童の右眼に当たり当該児童が負傷した事故につき,教室内にいた担任教諭に児童の安全確保等についての過失がないとされた事例

平成20年4月18日最高裁判所第二小法廷判決 裁判要旨 公立小学校3年の男子児童が,朝自習の時間帯に,教室後方にあるロッカーから落ちていた自分のベストを拾うため離席し,ほこりを払おうとしてこれを頭上で振り回したところ,ファスナー部分がちょうど席を…

国際捜査共助に基づき中華人民共和国において同国の捜査官によって作成された供述調書が刑訴法321条1項3号の書面に当たるとされた事例

平成23年10月20日最高裁判所第一小法廷判決 裁判要旨 国際捜査共助に基づき,中華人民共和国において身柄を拘束されていた共犯者を同国の捜査官が取り調べ,その供述を録取した供述調書であって,犯罪事実の証明に欠くことができないものは,同国の捜査機関…

音楽著作権の管理事業者(JASRAC)が放送への利用の許諾につき使用料の徴収方法を定めるなどの行為が,独占禁止法2条5項にいう「排除」の要件である他の事業者の参入を著しく困難にする効果を有するとされた事例

平成27年4月28日最高裁判所第三小法廷判決 裁判要旨 音楽著作権の管理事業を行う既存の事業者が,その管理する音楽著作物の放送への利用の包括的な許諾につき,ほとんど全ての放送事業者との間で年度ごとの放送事業収入に所定の率を乗じて得られる金額又は所…

 譲渡担保権者が被担保債権の弁済期後に目的不動産を譲渡した場合における受戻しの許否

平成6年2月22日最高裁判所第三小法廷判決 裁判要旨 譲渡担保権者が被担保債権の弁済期後に目的不動産を譲渡した場合には、譲渡担保を設定した債務者は、譲受人がいわゆる背信的悪意者に当たるときであると否とにかかわらず、債務を弁済して目的不動産を受け…

刑事事件の法廷において身体の拘束を受けている状態の被告人の容ぼう,姿態を描いたイラスト画を写真週刊誌に掲載して公表した行為が不法行為法上違法とされた事例

平成17年11月10日最高裁判所第一小法廷判決 裁判要旨 1 人はみだりに自己の容ぼう,姿態を撮影されないということについて法律上保護されるべき人格的利益を有し,ある者の容ぼう,姿態をその承諾なく撮影することが不法行為法上違法となるかどうかは,被撮…

共同相続人間の相続分の贈与を原因とする農地の持分移転登記の申請を農地法3条1項の許可を証する書面の添付がないことを理由に却下することの可否

平成13年7月10日最高裁判所第三小法廷判決 裁判要旨 1 共同相続人間においてされた相続分の譲渡に伴って生ずる農地の権利移転については,農地法3条1項の許可を要しない。 2 共同相続人の共有の相続登記がされている農地につき,「相続分の贈与」を原因…

不動産の所有権が,元の所有者から中間者に,次いで中間者から現在の所有者に,順次移転したにもかかわらず,登記名義がなお元の所有者の下に残っている場合において,現在の所有者が元の所有者に対し,元の所有者から現在の所有者に対する真正な登記名義の回復を原因とする所有権移転登記手続を請求することは許されるか

平成22年12月16日最高裁判所第一小法廷判決 裁判要旨 不動産の所有権が,元の所有者から中間者に,次いで中間者から現在の所有者に,順次移転したにもかかわらず,登記名義がなお元の所有者の下に残っている場合において,現在の所有者が元の所有者に対し,…

 ゴルフ場経営を目的とする地上権設定契約及び土地賃貸借契約につき借地借家法11条(地代等増減請求権)の類推適用をする余地はないとされた事例

平成25年1月22日最高裁判所第三小法廷判決 裁判要旨 地上権設定契約及び土地賃貸借契約において,ゴルフ場経営を目的とすることが定められているにすぎず,当該土地が建物の所有と関連するような態様で使用されていることもうかがわれないという事実関係の下…

市の設置する特定の保育所を廃止する条例の制定行為が抗告訴訟の対象となる行政処分に当たるとされた事例

平成21年11月26日最高裁判所第一小法廷判決 裁判要旨 市の設置する特定の保育所を廃止する条例の制定行為は,当該保育所の利用関係が保護者の選択に基づき保育所及び保育の実施期間を定めて設定されるものであり,現に保育を受けている児童及びその保護者は…