最高裁判例の勉強部屋:毎日数個の最高裁判例を読む

上告理由を発見するためには常日頃から最高裁判例を読む習慣が有効:弁護士中山知行/富士市/TEL0545-50-9701

2023-05-01から1ヶ月間の記事一覧

株式会社の新設分割において,会社分割に伴う労働契約の承継等に関する法律3条によれば分割をする会社との労働契約が分割によって設立される会社に承継されるものとされている労働者につき,当該承継の効力が生じないとはいえないとされた事例

平成22年7月12日最高裁判所第二小法廷判決 裁判要旨 1 株式会社の新設分割において,会社分割に伴う労働契約の承継等に関する法律(平成17年法律第87号による改正前のもの)3条によれば分割をする会社との労働契約が分割によって設立される会社に承継…

権利能力のない社団である入会団体の代表者が総有権確認請求訴訟を原告の代表者として追行する場合における特別の授権の要否    権利能力のない社団である入会団体の代表者でない構成員が総有不動産についての登記手続請求訴訟の原告適格を有する場合

平成6年5月31日最高裁判所第三小法廷判決 裁判要旨 一 入会権者である村落住民が入会団体を形成し、それが権利能力のない社団に当たる場合には、右入会団体は、構成員全員の総有に属する不動産についての総有権確認請求訴訟の原告適格を有する。二 権利能力…

検察官が検察庁の庁舎内に接見の場所が存在しないことを理由として同庁舎内に居る被疑者との接見の申出を拒否したにもかかわらず弁護人が同庁舎内における即時の接見を求め即時に接見をする必要性が認められる場合に検察官が執るべき措置

平成17年4月19日最高裁判所第三小法廷判決 裁判要旨 1 弁護人から検察庁の庁舎内に居る被疑者との接見の申出を受けた検察官は,同庁舎内に,その本来の用途,設備内容等からみて,検察官が,その部屋等を接見のためにも用い得ることを容易に想到することが…

営業の重要な一部を譲渡する旨の決議がされた株主総会の招集通知に右営業の譲渡の要領を記載しなかった違法がある場合に決議の取消請求を棄却することの可否

平成7年3月9日最高裁判所第一小法廷判決 裁判要旨 営業の重要な一部を譲渡する旨の株主総会決議がされたが、右営業の譲渡の要領を株主総会の招集通知に記載しなかった違法がある場合には、右違法が重大でないとはいえず、商法二五一条により右決議の取消請求…

デイーゼル・エンジン自動車の運転者の失火と業務上失火罪の成否

昭和46年12月20日最高裁判所第二小法廷決定 裁判要旨 自動車に装置したデイーゼル・エンジンの排気管は、運転中著しく高温となり、これに可燃物が接触すると火災発生の危険があるのに、運転者が、排気管と接触するおそれのある状態で運転席の床にゴム板を装…

市立中学校の生徒が課外クラブ活動としての柔道部の回し乱取り練習中に負傷した事故について顧問教諭に指導上の過失がないとされた事例

平成9年9月4日最高裁判所第一小法廷判決 裁判要旨 市立中学校の一年生甲が、同校の課外クラブ活動としての柔道部の回し乱取り練習中に、二年生乙から大外刈りの技をかけられて負傷した場合において、甲が、右の事故当時、回し乱取り練習に通常必要とされる受…

共同親権者間における幼児の人身保護請求につき被拘束者が拘束者に監護されることが請求者による監護に比べて子の幸福に反することが明白であるものとして拘束の違法性が顕著であるとされる場合

平成6年4月26日最高裁判所第三小法廷判決 裁判要旨 夫婦の一方が他方に対し、人身保護法に基づき、共同親権に服する幼児の引渡しを請求するに際し、他方の配偶者の親権の行使が家事審判規則五二条の二の仮処分等により実質上制限されているのに右配偶者がこ…

貸金の支払を求める訴訟において,前訴でその貸金に係る消費貸借契約の成立を主張していた被告が同契約の成立を否認することは信義則に反するとの原告の主張を採用しなかった原審の判断に違法があるとされた事例

令和元年7月5日最高裁判所第二小法廷判決 裁判要旨 XがAからYに対する貸金返還請求権を譲り受けたとしてYに対し貸金の支払を求める訴訟において,YがAから金員を受領したことを認めたが同金員に係る金銭消費貸借契約の成立を否認した場合において,次…

1 被告人の経歴等と詳細な記載がある起訴状が刑訴法第二五六条第六項に違反しないとされた一事例 2 恐喝の手段として郵送された脅迫文書の殆んど全文が記載された起訴状と刑訴法第二五六条第六項

昭和33年5月20日最高裁判所第三小法廷判決 裁判要旨 一 本件起訴状に被告人の経歴等に関する詳細な記載があるからといつてそれが刑訴法第二五六条第六項に違反するものであるということはできない二 恐喝の手段として被害者に郵送された脅迫文書の趣旨が婉曲…

鉄道高架下施設の一部分の賃貸借契約に借家法の適用があるとされた事例

平成4年2月6日最高裁判所第一小法廷判決 裁判要旨 鉄道高架下施設が土地に定着し、周壁を有し、鉄道高架を屋根としており、永続して営業の用に供することが可能なものであって、その一部分が他の部分とは客観的に区別されていて、独立的、排他的な支配が可能…

 金融機関が記名式定期預金の預金者と誤認した者に対する貸付債権をもつてした預金債権との相殺につき民法四七八条が類推適用されるために必要な注意義務を尽くしたか否かの判断の基準時

昭和59年2月23日最高裁判所第一小法廷判決 裁判要旨 金融機関が、記名式定期預金につき真実の預金者甲と異なる乙を預金者と認定して乙に貸付をしたのち、貸付債権を自働債権とし預金債権を受働債権としてした相殺が民法四七八条の類推適用により甲に対して効…

 会社法346条1項に基づき退任後もなお会社の役員としての権利義務を有する者に対する解任の訴えの許否

平成20年2月26日最高裁判所第三小法廷判決 裁判要旨 会社法346条1項に基づき退任後もなお会社の役員としての権利義務を有する者の職務の執行に関し不正の行為又は法令若しくは定款に違反する重大な事実があった場合において,同法854条を適用又は類推…

外国国家が私人との間の契約に含まれた明文の規定により我が国の民事裁判権に服することを約した場合と民事裁判権の免除

平成18年7月21日最高裁判所第二小法廷判決 裁判要旨 1 外国国家は,主権的行為以外の私法的ないし業務管理的な行為については,我が国による民事裁判権の行使が当該外国国家の主権を侵害するおそれがあるなど特段の事情がない限り,我が国の民事裁判権に服…

刑訴法39条3項本文の規定は、憲法34条前段、37条3項、38条1項に違反しない。

平成11年3月24日最高裁判所大法廷判決 https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/506/052506_hanrei.pdf 一 刑訴法三九条三項本文の規定と憲法三四条前段所論は、要するに、身体の拘束を受けている被疑者と弁護人又は弁護人を選任することができる者の…

債務者の破産手続開始の決定後に物上保証人が複数の被担保債権のうちの一部の債権につきその全額を弁済した場合に,債権者が破産手続において上記弁済に係る債権を行使することの可否

平成22年3月16日最高裁判所第三小法廷判決 裁判要旨 債務者の破産手続開始の決定後に,物上保証人が複数の被担保債権のうちの一部の債権につきその全額を弁済した場合には,複数の被担保債権の全部が消滅していなくても,上記の弁済に係る当該債権については…

普通地方公共団体の議会の議員に対する懲罰その他の措置が当該議員の私法上の権利利益を侵害することを理由とする国家賠償請求の当否の判断方法

平成31年2月14日最高裁判所第一小法廷判決 裁判要旨 1 普通地方公共団体の議会の議員に対する懲罰その他の措置が当該議員の私法上の権利利益を侵害することを理由とする国家賠償請求の当否を判断するに当たっては,当該措置が議会の内部規律の問題にとどま…

子の引渡しを命ずる審判を債務名義とする間接強制の申立てが権利の濫用に当たるとされた事例

平成31年4月26日最高裁判所第三小法廷決定 裁判要旨 婚姻中の父母のうち父に対して長男A,二男B及び長女Cを母に引き渡すよう命ずる審判を債務名義とするAの引渡しについての間接強制の申立ては,次の(1),(2)など判示の事情の下では,権利の濫用に当たる…

現況調査に訪れた執行官に対して虚偽の事実を申し向けるなどした刑法96条の3第1項該当行為があった時点が刑訴法253条1項にいう「犯罪行為が終つた時」とはならないとされた事例

平成18年12月13日最高裁判所第三小法廷決定 裁判要旨 現況調査に訪れた執行官に対して虚偽の事実を申し向け,内容虚偽の契約書類を提出した行為は,刑法96条の3第1項の「公の競売又は入札の公正を害すべき行為」に当たるが,上記虚偽の事実の陳述等に基…

無断転貸にもかかわらず賃貸借の解除ができない場合にされた賃貸借の合意解除と転借人の地位

昭和62年3月24日最高裁判所第三小法廷判決 裁判要旨 土地の無断転貸が行われたにもかかわらず賃貸人に対する背信行為と認めるに足りない特段の事情があるため賃貸人が賃貸借を解除することができない場合において、当該賃貸借が合意解除されたとしても、それ…

 第三者異議の訴えの原告についての法人格否認の法理の適用

平成17年7月15日最高裁判所第二小法廷判決 裁判要旨 第三者異議の訴えの原告の法人格が執行債務者に対する強制執行を回避するために濫用されている場合には,原告は,執行債務者と別個の法人格であることを主張して強制執行の不許を求めることは許されない。…

公にされている処分基準の適用関係を示さずにされた建築士法(平成18年法律第92号による改正前のもの)10条1項2号及び3号に基づく一級建築士免許取消処分が,行政手続法14条1項本文の定める理由提示の要件を欠き,違法であるとされた事例

平成23年6月7日最高裁判所第三小法廷判決 裁判要旨 建築士法(平成18年法律第92号による改正前のもの)10条1項2号及び3号に基づいてされた一級建築士免許取消処分の通知書において,処分の理由として,名宛人が,複数の建築物の設計者として,建築…

加入電話契約者以外の者がいわゆるダイヤルQ2事業における有料情報サービスを利用した場合における加入電話契約者の情報料支払義務の有無

平成13年3月27日最高裁判所第三小法廷判決 裁判要旨 1 加入電話契約者以外の者がいわゆるダイヤルQ2事業における有料情報サービスを利用した場合には,加入電話契約者は,情報料債務を自ら負担することを承諾しているなど特段の事情がない限り,情報提供…

賃貸人が地上の建物の不存在を理由に借地人の借地法四条一項に基づく借地権の更新請求権がないと主張することが信義則上許されないとされた事例

昭和52年3月15日最高裁判所第三小法廷判決 裁判要旨 従前の土地の賃借人が、仮換地上に移築し、所有していた建物が火災によつて滅失したのち、その再築をしょうとしたのに、賃貸人の建築禁止通告及びこれに続く仮換地明渡調停の申立によつて建物の築造を妨げ…

無利息無担保の金銭消費貸借は商法第二六五条にいう取引にあたるか。

昭和38年12月6日最高裁判所第二小法廷判決 裁判要旨 株式会社に対しその取締役が無利息、無担保で金銭を貸し付ける行為は、商法第二六五条にいう取引にあたらない。 https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/806/053806_hanrei.pdf 商法二六五条が、取…

行為当時の最高裁判所の判例の示す法解釈に従えば無罪となるべき行為を処罰することと憲法三九条

平成8年11月18日最高裁判所第二小法廷判決 裁判要旨 行為当時の最高裁判所の判例の示す法解釈に従えば無罪となるべき行為であっても、これを処罰することは憲法三九条に違反しない。(補足意見がある。) https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/144/05…

共同抵当の関係にある不動産の一部に対する抵当権の放棄とその余の不動産の譲受人が民法五〇四条所定の免責の効果を主張することの可否

平成3年9月3日最高裁判所第三小法廷判決 裁判要旨 債務者所有の甲不動産と第三者所有の乙不動産とが共同抵当の関係にある場合において、債権者が甲不動産に設定された抵当権を放棄するなど故意又はけ怠によりその担保を喪失又は減少したときは、その後の乙不…

裁判官がした証拠保全における押収の裁判に対する準抗告の決定に対する特別抗告事件

平成17年11月25日最高裁判所第二小法廷決定 裁判要旨 捜査機関が収集し保管している証拠は,特段の事情が存しない限り,証拠保全手続の対象にならない。 https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/101/050101_hanrei.pdf 主 文本件抗告を棄却する。理 …

1不法行為に基づく損害賠償請求訴訟につき民訴法の不法行為地の裁判籍の規定に依拠して我が国の裁判所の国際裁判管轄を肯定するために証明すべき事項   2ある管轄原因により我が国の裁判所の国際裁判管轄が肯定される請求の当事者間における他の請求につき民訴法の併合請求の裁判籍の規定に依拠して我が国の裁判所の国際裁判管轄を肯定するための要件

平成13年6月8日最高裁判所第二小法廷判決 裁判要旨 1 我が国に住所等を有しない被告に対し提起された不法行為に基づく損害賠償請求訴訟につき,民訴法の不法行為地の裁判籍の規定に依拠して我が国の裁判所の国際裁判管轄を肯定するためには,原則として,被…

国選弁護人の解任がやむをえないとされた事例

昭和54年7月24日最高裁判所第三小法廷判決 裁判要旨 一 被告人が国選弁護人を通じて正当な防禦活動を行う意思がないことを自らの行動によつて表明したものと評価すべき判示の事情のもとにおいては、裁判所が国選弁護人の辞意を容れてこれを解任してもやむを…

会社の絵画等購入担当者の特別背任行為につき同社に絵画等を売却した会社の支配者が共同正犯とされた事例

平成17年10月7日最高裁判所第三小法廷決定 裁判要旨 甲社の絵画等購入担当者である乙らが,丙の依頼を受けて,甲社をして丙が支配する丁社から多数の絵画等を著しく不当な高額で購入させ,甲社に損害を生じさせた場合において,その取引の中心となった甲と丙…