最高裁判例の勉強部屋:毎日数個の最高裁判例を読む

上告理由を発見するためには常日頃から最高裁判例を読む習慣が有効:弁護士中山知行/富士市/TEL0545-50-9701

2023-05-01から1ヶ月間の記事一覧

被害者を殺害した加害者が被害者の相続人において被害者の死亡の事実を知り得ない状況を殊更に作出したため相続人がその事実を知ることができなかった場合における上記殺害に係る不法行為に基づく損害賠償請求権と民法724条後段の除斥期間

平成21年4月28日最高裁判所第三小法廷判決 裁判要旨 被害者を殺害した加害者が被害者の相続人において被害者の死亡の事実を知り得ない状況を殊更に作出し,そのために相続人はその事実を知ることができず,相続人が確定しないまま上記殺害の時から20年が経…

 民法391条にもとづく優先償還をすることなく抵当権者に対してされた競売代金の交付と不当利得の成否

昭和48年7月12日最高裁判所第一小法廷判決 裁判要旨 抵当不動産の第三取得者が、民法三九一条にもとづく優先償還請求権を有しているにもかかわらず、抵当不動産の競売代金が抵当権者に交付されたため優先償還を受けられなかつたときは、右第三取得者は、抵当…

厚生年金保険の被保険者であった叔父と内縁関係にあった姪が厚生年金保険法に基づき遺族厚生年金の支給を受けることのできる配偶者に当たるとされた事例

平成19年3月8日最高裁判所第一小法廷判決 裁判要旨 厚生年金保険の被保険者であった叔父と姪との内縁関係が,叔父と先妻との子の養育を主たる動機として形成され,当初から反倫理的,反社会的な側面を有していたものとはいい難く,親戚間では抵抗感なく承認…

株式会社が定款で株主総会における議決権行使の代理人の資格を株主に限定している場合と株主である地方公共団体、株式会社の職員又は従業員による議決権の代理行使

昭和51年12月24日最高裁判所第二小法廷判決 裁判要旨 1、株式会社が定款で株主総会における議決権行使の代理人の資格を株主に限定している場合においても、株主である地方公共団体、株式会社が、その職制上上司の命令に服する義務を負い、議決権の代理行使に…

地方公共団体が建築工事の中止命令の名あて人に対して同工事を続行してはならない旨の裁判を求める訴えが不適法とされた事例

平成14年7月9日最高裁判所第三小法廷判決 裁判要旨 1 国又は地方公共団体が専ら行政権の主体として国民に対して行政上の義務の履行を求める訴訟は,不適法である。2 宝塚市が,宝塚市パチンコ店等,ゲームセンター及びラブホテルの建築等の規制に関する条…

新会社が旧会社と法人格を異にするとの実体法上および訴訟法上の主張が信義則に反し許されないとされた事例

昭和48年10月26日最高裁判所第二小法廷判決 裁判要旨 株式会社の代表取締役が、会社が賃借している居室の明渡し、延滞賃料等の債務を免れるために、会社の商号を変更したうえ、旧商号と同一の商号を称し、その代表取締役、監査役、本店所在地、営業所、什器…

債権譲渡人について支払停止又は破産の申立てがあったことを停止条件とする債権譲渡契約に係る債権譲渡と破産法72条2号による否認

平成16年9月14日最高裁判所第三小法廷判決 裁判要旨 債権譲渡人について支払停止又は破産の申立てがあったことを停止条件とする債権譲渡契約に係る債権譲渡は,破産法72条2号に基づく否認権行使の対象となる。 https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei…

 破産管財人が別除権の目的である不動産の受戻しについて上記別除権を有する者との間で交渉し又は上記不動産につき権利の放棄をする前後に上記の者に対してその旨を通知するに際し、上記の者に対して破産者を債務者とする上記別除権に係る担保権の被担保債権についての債務の承認をしたときに、その承認は上記被担保債権の消滅時効を中断する効力を有するか

令和5年2月1日最高裁判所第三小法廷決定 裁判要旨 破産管財人が、別除権の目的である不動産の受戻しについて上記別除権を有する者との間で交渉し、又は、上記不動産につき権利の放棄をする前後に上記の者に対してその旨を通知するに際し、上記の者に対して破…

暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律11条2項、46条1号と憲法14条1項

令和5年1月23日最高裁判所第一小法廷判決 判示事項 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律11条2項、46条1号は,憲法14条1項に違反しない。 https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/702/091702_hanrei.pdf 1 弁護人の上告趣意のうち…

統合失調症の治療のため精神科病院に任意入院者として入院した患者が無断離院をして自殺した場合において、上記病院の設置者に無断離院の防止策についての説明義務違反があったとはいえないとされた事例

令和5年1月27日最高裁判所第二小法廷判決 裁判要旨 統合失調症の治療のため精神科病院に任意入院者として入院した患者が、単独での院内外出(病棟から上記病院の敷地内への外出)を許可され、敷地外への単独での外出を許可されていなかったにもかかわらず、…

個品割賦購入あっせんにおいて,購入者と販売業者との間の売買契約が公序良俗に反し無効であることにより,購入者とあっせん業者との間の立替払契約が無効となるか

平成23年10月25日最高裁判所第三小法廷判決 裁判要旨 個品割賦購入あっせんにおいて,購入者と販売業者との間の売買契約が公序良俗に反し無効とされる場合であっても,販売業者とあっせん業者との関係,販売業者の立替払契約締結手続への関与の内容及び程度…

国が連合国最高司令官総司令部の発した覚書に従い南方地域から帰還した日本人捕虜に対して抑留期間中の労働賃金を決済する措置を講じてきたことを理由としてシベリア抑留者が憲法一四条に基づき国に対して抑留期間中の労働賃金の支払を請求することの可否

平成9年3月13日最高裁判所第一小法廷判決 裁判要旨 1 シベリア抑留者は、日本国とソヴィエト社会主義共和国連邦との共同宣言六項後段に定める請求権放棄によりソヴィエト社会主義共和国連邦に対して損害の賠償を求めることが実際上不可能となったことによる…

国家賠償法一条一項に基づく損害賠償請求に憲法二九条三項に基づく損失補償請求を控訴審において予備的・追加的に併合する場合の相手方の同意の要否

平成5年7月20日最高裁判所第三小法廷判決 裁判要旨 1 国家賠償法一条一項の規定に基づく損害賠償請求に憲法二九条三項の規定に基づく損失補償請求を予備的、追加的に併合することが申し立てられた場合において、右予備的請求が、主位的請求と被告を同じくす…

建造物の管理権者が立入り拒否の意思を積極的に明示していない場合と建造物侵入罪の成否

昭和58年4月8日最高裁判所第二小法廷判決 裁判要旨 1 刑法130条前段にいう「侵入シ」とは、他人の看守する建造物等に管理権者の意思に反して立ち入ることをいう。2 建造物の管理権者が予め立入り拒否の意思を積極的に明示していない場合であつても、該建造物…

 特定の土地の分割方法を定めた遺言の存在を知らないでされた遺産分割協議の意思表示に要素の錯誤がないとはいえないとされた事例

平成5年12月16日最高裁判所第一小法廷判決 裁判要旨 特定の土地につきおおよその面積と位置を示して分割した上それぞれを相続人甲、乙、丙に相続させる趣旨の分割方法を定めた遺言が存在したのに、相続人丁が右土地全部を相続する旨の遺産分割協議がされた場…

遺言認知無効請求

昭和51年1月16日最高裁判所第二小法廷判決 裁判要旨 遺言者が、公正証書によつて遺言をするにあたり、公証人の質問に対し言語をもつて陳述することなく単に肯定又は否定の挙動を示したにすぎないときには、民法九六九条二号にいう口授があつたものとはいえず…

遺言無効確認の訴の適否

昭和47年2月15日最高裁判所第三小法廷判決 裁判要旨 遺言無効確認の訴は、その遺言が有効であるとすればそれから生ずべき現在の特定の法律関係が存在しない.ことの確認を求めるものと解される場合で、原告がかかる確認を求める法律上の利益を有するときは、…

1 営業譲渡契約が譲受会社にとつて財産引受に当たるのに原始定款に記載しなかつたことにより無効であるとの主張が信義則に反し許されないとされた事例   2 営業譲渡契約が株主総会の特別決議を経ていないことにより無効であるとの譲受人の主張が信義則に反し許されないとされた事例

昭和61年9月11日最高裁判所第一小法廷判決 裁判要旨 1 営業譲渡契約が譲渡会社の株主総会の特別決議を経ていないことにより無効である場合には、譲受人もまた右の無効を主張することができる。 2 営業譲渡契約が譲受会社にとつて財産引受に当たるのに、これ…

 公正証書による遺言が口授の要件を欠くものとはいえないとされた事例

昭和54年7月5日最高裁判所第一小法廷判決 裁判要旨 公証人が予め他人作成のメモにより公正証書作成の準備として筆記したものに基づいて遺言者の陳述を聞き、右筆記を原本として公正証書を作成した場合であつても、原審認定の事実関係(原判決理由参照)のも…

遺言者の押印の際に二人の証人のうち一人の立会いなく作成された遺言公正証書につきその作成の方式に瑕疵があるがその効力を否定するほかはないとまではいえないとされた事例

平成10年3月13日最高裁判所第二小法廷判決 裁判要旨 1 公正証書遺言において、証人は、遺言者の署名押印に立ち会うことを要する。2 公正証書遺言において、遺言者が、証人甲乙の立会いの下に、遺言の趣旨を口授しその筆記を読み聞かされた上で署名をしたとこ…

 1 共有者全員が提起した共有権確認訴訟と固有必要的共同訴訟   2 共有者全員が提起した共有権に基づく所有権移転登記手続請求訴訟と固有必要的共同訴訟

昭和46年10月7日最高裁判所第一小法廷判決 裁判要旨 1 一個の物を共有する数名の者全員が、共同原告となり、共有権(その数名が共同して有する一個の所有権)に基づき共有権の確認を求めているときは、その訴訟の形態は、固有必要的共同訴訟と解すべきである…

 インターネットを利用して短文の投稿をすることができる情報ネットワークにおいてある者のプライバシーに属する事実を摘示するメッセージが投稿された場合にその者が上記情報ネットワークの運営者に対して上記メッセージの削除を求めることができるとされた事例

令和4年6月24日最高裁判所第二小法廷判決 裁判要旨 インターネットを利用して短文の投稿をすることができる情報ネットワークにおいて、ある者が建造物侵入の被疑事実により逮捕されたというその者のプライバシーに属する事実を摘示するメッセージの投稿がさ…

相続財産分与の審判前に特別縁故者に当たると主張する者が提起した遺言無効確認の訴えと訴えの利益の有無

平成6年10月13日最高裁判所第一小法廷判決 裁判要旨 民法九五八条の三第一項の規定による相続財産の分与の審判前に特別縁故者に当たると主張する者が提起した遺言無効確認の訴えは、訴えの利益を欠く。 https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/696/06…

共同相続人間における相続人の地位不存在確認の訴えと固有必要的共同訴訟

平成16年7月6日最高裁判所第三小法廷判決 裁判要旨 共同相続人が,他の共同相続人に対し,その者が被相続人の遺産につき相続人の地位を有しないことの確認を求める訴えは,固有必要的共同訴訟である。 https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/382/052…

子に対する保護責任者遺棄致死被告事件について,被告人の故意を認めず無罪とした第1審判決に事実誤認があるとした原判決に,刑訴法382条の解釈適用を誤った違法があるとされた事例

平成30年3月19日最高裁判所第二小法廷判決 裁判要旨 1 刑法218条の不保護による保護責任者遺棄罪の実行行為は,老年者,幼年者,身体障害者又は病者につきその生存のために特定の保護行為を必要とする状況(要保護状況)が存在することを前提として,そ…

 市町村が設置する中学校の教諭が生徒に与えた損害を国家賠償法1条1項,3条1項に従い賠償した都道府県が当該中学校を設置する市町村に対して同条2項に基づき取得する求償権の範囲

平成21年10月23日最高裁判所第二小法廷判決 裁判要旨 市町村が設置する中学校の教諭がその職務を行うについて故意又は過失によって違法に生徒に損害を与えた場合において,当該教諭の給料その他の給与を負担する都道府県が国家賠償法1条1項,3条1項に従…

医薬品,医療機器等の品質,有効性及び安全性の確保等に関する法律36条の6第1項及び3項と憲法22条1項

令和3年3月18日最高裁判所第一小法廷判決 裁判要旨 医薬品,医療機器等の品質,有効性及び安全性の確保等に関する法律36条の6第1項及び3項は,憲法22条1項に違反しない。 https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/141/090141_hanrei.pdf 第1 …

入会部落の慣習に基づく入会集団の会則のうち入会権者の資格を原則として男子孫に限定し同入会部落の部落民以外の男性と婚姻した女子孫は離婚して旧姓に復しない限り入会権者の資格を認めないとする部分が民法90条の規定により無効とされた事例

平成18年3月17日最高裁判所第二小法廷判決 裁判要旨 1 A入会部落の慣習に基づく入会集団の会則のうち入会権者の資格要件を一家の代表者としての世帯主に限定する部分は,現在においても,公序良俗に反するものということはできない。 2 A入会部落の慣習…

 不動産の取得時効の完成後,所有権移転登記がされることのないまま,第三者が原所有者から抵当権の設定を受けて抵当権設定登記を了した場合における,再度の取得時効の完成と上記抵当権の消長

平成24年3月16日最高裁判所第二小法廷判決 裁判要旨 不動産の取得時効の完成後,所有権移転登記がされることのないまま,第三者が原所有者から抵当権の設定を受けて抵当権設定登記を了した場合において,上記不動産の時効取得者である占有者が,その後引き続…

車両に使用者らの承諾なく秘かにGPS端末を取り付けて位置情報を検索し把握する刑事手続上の捜査であるGPS捜査は令状がなければ行うことができない強制の処分か

平成29年3月15日最高裁判所大法廷判決 裁判要旨 車両に使用者らの承諾なく秘かにGPS端末を取り付けて位置情報を検索し把握する刑事手続上の捜査であるGPS捜査は,個人のプライバシーの侵害を可能とする機器をその所持品に秘かに装着することによって,…