最高裁判例の勉強部屋:毎日数個の最高裁判例を読む

上告理由を発見するためには常日頃から最高裁判例を読む習慣が有効:弁護士中山知行/富士市/TEL0545-50-9701

2023-01-01から1年間の記事一覧

 母死亡後非嫡出の子の提起する親子関係存在確認の訴の許否

昭和49年3月29日最高裁判所第二小法廷判決 裁判要旨 認知の訴によらず母との親子関係を主張できる非嫡出の子は、母が死亡した後でも、検察官を相手方として、同女との間の親子関係の存在確認の訴を提起することができる。 https://www.courts.go.jp/app/file…

株主総会の決議を経ずに役員報酬が支払われたことを理由として当該報酬相当額の賠償を求める株主代表訴訟において被告とされた役員らが同訴訟提起後に当該報酬につき株主総会の決議を経たことを主張することと訴訟上の信義

平成17年2月15日最高裁判所第三小法廷判決 裁判要旨 1 株主総会の決議を経ずに支払われた役員報酬について事後に株主総会の決議を経た場合には,当該決議の内容等に照らして商法(平成14年法律第44号による改正前のもの)269条及び商法279条1項…

 賃借土地上の数棟の建物のうち一部の建物が譲渡されたため土地賃貸借契約全体が解除された場合とそのほかの建物についての買取請求権の有無

昭和54年5月29日最高裁判所第三小法廷判決 裁判要旨 賃借土地上の数棟の建物のうち一部の建物の譲渡にともなう借地の一部無断転貸を理由として土地賃貸借契約全体が解除された場合には、そのほかの建物について所有者である借地人は建物買取請求権を有しない…

 いわゆる位置指定道路の通行妨害と妨害排除請求権

平成9年12月18日最高裁判所第一小法廷判決 裁判要旨 建築基準法四二条一項五号の規定による位置の指定を受け現実に開設されている道路を通行することについて日常生活上不可欠の利益を有する者は、右道路の通行をその敷地の所有者によって妨害され、又は妨害…

 逮捕状の更新が繰り返されている時点における捜査機関又は令状発付裁判官の判断の違法を理由とする国家賠償請求の許否

平成5年1月25日最高裁判所第二小法廷判決 裁判要旨 逮捕状の更新が繰り返されている時点で、逮捕状の請求、発付における捜査機関又は令状発付裁判官の被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があったとする判断の違法を主張して、国家賠償を請求す…

 幼児が公の営造物を設置管理者の通常予測し得ない異常な方法で使用して生じた事故につき設置管理者が損害賠償責任を負わないとされた事例

平成5年3月30日最高裁判所第三小法廷判決 裁判要旨 幼児が、テニスの審判台に昇り、その後部から座席部分の背当てを構成している左右の鉄パイプを両手で握つて降りようとしたために転倒した審判台の下敷きになつて死亡した場合において、当該審判台には、本…

抵当権の無効を主張することが信義則に照らして許されないとされた事例

昭和42年4月7日最高裁判所第二小法廷判決 裁判要旨 甲が、不動産について、共同相続によつて持分しか取得しなかつたにもかかわらず、自己が単独相続をしたとして、その旨の所有権移転登記を経由したうえ乙と右不動産について抵当権設定契約を締結し、その旨…

遺留分減殺請求を受けた受遺者が,民法1041条所定の価額を弁償する旨の意思表示をしたが,目的物の現物返還請求も価額弁償請求も受けていない場合において,受遺者の提起した弁償すべき額の確定を求める訴えに確認の利益があるか

平成21年12月18日最高裁判所第二小法廷判決 裁判要旨 遺留分権利者から遺留分減殺請求を受けた受遺者が,民法1041条所定の価額を弁償する旨の意思表示をしたが,遺留分権利者から目的物の現物返還請求も価額弁償請求もされていない場合において,弁償す…

意思能力のある子の法定代理人による認知の訴

昭和43年8月27日最高裁判所第三小法廷判決 裁判要旨 未成年の子の法定代理人は、子に意思能力がある場合でも、子を代理して、認知の訴を提起することができる。 https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/087/054087_hanrei.pdf 身分上の行為は、原則と…

離婚に伴う慰謝料として夫婦の一方が負担すべき損害賠償債務が履行遅滞となる時期

令和4年1月28日最高裁判所第二小法廷判決 裁判要旨 離婚に伴う慰謝料として夫婦の一方が負担すべき損害賠償債務は,離婚の成立時に遅滞に陥る。離婚成立時の民法が適用されるので,遅延損害金は年3%である。 https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/…

民法九一五条一項所定の熟慮期間について相続人が相続財産の全部若しくは一部の存在を認識した時又は通常これを認識しうべかりし時から起算するのが相当であるとされる場合

昭和59年4月27日最高裁判所第二小法廷判決 裁判要旨 相続人において相続開始の原因となる事実及びこれにより自己が法律上相続人となつた事実を知つた時から三か月以内に限定承認又は相続放棄をしなかつたのが、相続財産が全く存在しないと信じたためであり、…

借地権付き建物に対する強制競売において借地権が存在しなかった場合と民法五六八条一項、二項及び五六六条一項、二項の類推適用

平成8年1月26日最高裁判所第二小法廷判決 裁判要旨 建物に対する強制競売において、借地権の存在を前提として売却が実施されたことが明らかであるにもかかわらず、代金納付の時点において借地権が存在しなかった場合、買受人は、そのために建物買受けの目的…

保険料の払込みがされない場合に履行の催告なしに生命保険契約が失効する旨を定める約款の条項の,消費者契約法10条にいう「民法第1条第2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するもの」該当性

平成24年3月16日最高裁判所第二小法廷判決 裁判要旨 生命保険契約に適用される約款中の保険料の払込みがされない場合に履行の催告なしに保険契約が失効する旨を定める条項は,(1)これが,保険料が払込期限内に払い込まれず,かつ,その後1か月の猶予期間の…

貸主が数名あるときの家屋明渡請求権と不可分給付を求める権利

昭和42年8月25日最高裁判所第二小法廷判決 裁判要旨 使用貸借契約の終了を原因とする家屋明渡請求権は性質上の不可分給付を求める権利と解すべきであつて、貸主が数名あるときは、各貸主は総貸主のため家屋全部の明渡を請求することができる。 https://www.c…

民法五五七条にいわゆる「契約ノ履行ニ著手」したものと認められた事例

昭和51年12月20日最高裁判所第一小法廷判決 裁判要旨 借家人の居住する建物及びその敷地の売買で、売主が借家人を立ち退かせたうえで土地建物を買主に引き渡す約定である場合、売主が売買直後ごろ一、二度借家人に立退きを要求しただけでその後は借家人を立…

特許庁の担当職員の過失により特許権を目的とする質権を取得することができなかったことを理由とする国家賠償請求事件において損害の発生を認めるべきであって損害額の立証が困難であったとしても民訴法248条により相当な損害額が認定されなければならないとされた事例

平成18年1月24日最高裁判所第三小法廷判決 裁判要旨 1 特許庁の担当職員の過失により特許権を目的とする質権を取得することができなかった場合,これによる損害の額は,特段の事情のない限り,その被担保債権が履行遅滞に陥ったころ,当該質権を実行するこ…

 法務大臣が出入国管理及び難民認定法49条3項所定の裁決をするに当たり裁決書を作成しなかったことが同裁決及びその後の退去強制令書発付処分を取り消すべき違法事由に当たらないとされた事例

平成18年10月5日最高裁判所第一小法廷判決 裁判要旨 法務大臣が出入国管理及び難民認定法49条3項所定の裁決をするに当たり裁決書を作成しなかったことは出入国管理及び難民認定法施行規則(平成13年法務省令第76号による改正前のもの)43条に違反す…

いわゆる一項強盗による強盗殺人未遂罪ではなく窃盗罪又は詐欺罪といわゆる二項強盗による強盗殺人未遂罪との包括一罪になるとされた事例

昭和61年11月18日最高裁判所第一小法廷決定 裁判要旨 甲と乙が、当初は丙を殺害してその所持する覚せい剤を強取することを計画したが、その後計画を変更し、共謀の上、まず甲において、覚せい剤取引の斡旋にかこつけて丙をホテルの一室に呼び出し、別室に買…

無断転貸にもかかわらず賃貸借の解除ができない場合にされた賃貸借の合意解除と転借人の地位

昭和62年3月24日最高裁判所第三小法廷判決 裁判要旨 土地の無断転貸が行われたにもかかわらず賃貸人に対する背信行為と認めるに足りない特段の事情があるため賃貸人が賃貸借を解除することができない場合において、当該賃貸借が合意解除されたとしても、それ…

賃料債権の差押えの効力発生後に賃貸借契約がその目的物の賃借人への譲渡により終了した場合において,その後に支払期の到来する賃料債権を取り立てることの可否

平成24年9月4日最高裁判所第三小法廷判決 裁判要旨 賃貸人が賃借人に賃貸借契約の目的である建物を譲渡したことにより賃貸借契約が終了した以上は,その終了が賃料債権の差押えの効力発生後であっても,賃貸人と賃借人との人的関係,当該建物を譲渡するに至…

別訴において一部請求をしている債権の残部を自働債権とする相殺の抗弁の許否

平成10年6月30日最高裁判所第三小法廷判決 裁判要旨 一個の債権の一部についてのみ判決を求める旨を明示して訴えを提起している場合において、当該債権の残部を自働債権として他の訴訟において相殺の抗弁を主張することは、債権の分割行使をすることが訴訟上…

質権が設定されている金銭債権の被転付適格

平成12年4月7日最高裁判所第二小法廷決定 裁判要旨 質権が設定されている金銭債権は,券面額ある債権として被転付適格を有する。 https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/039/057039_hanrei.pdf 1 抗告人は、相手方に対する金員の支払を命ずる確定判…

鉄道トンネル内における電力ケーブルの接続工事を施工した業者につきトンネル内での火災発生の予見可能性が認められた事例

平成12年12月20日最高裁判所第二小法廷決定 裁判要旨 鉄道トンネル内における電力ケーブル接続工事に際し、施工資格を有してその工事に当たった者が、ケーブルに特別高圧電流が流れる場合に発生する誘起電流を接地するための接地銅板を接続器に取り付けるこ…

下請負人の被用者の不法行為につき元請負人が民法第七一五条の責任を負うための要件

昭和37年12月14日最高裁判所第二小法廷判決 裁判要旨 一 元請負人が下請負人に対し工事上の指図をしもしくはその監督のもとに工事を施行させ、その関係が使用者と被用者との関係またはこれと同視しうる場合であつても、下請負人の被用者の不法行為が元請負人…

被相続人から抵当権の設定を受けた相続債権者が相続財産法人に対して抵当権設定登記手続を請求することの可否

平成11年1月21日最高裁判所第一小法廷判決 裁判要旨 相続債権者は、被相続人から抵当権の設定を受けていても、被相続人の死亡前に仮登記がされていた場合を除き、相続財産法人に対して抵当権設定登記手続を請求することができない。 https://www.courts.go.j…

遺言の証人となることができない者が同席してされた公正証書遺言の効力

平成13年3月27日最高裁判所第三小法廷判決 裁判要旨 遺言公正証書の作成に当たり当該遺言の証人となることができない者が同席していたとしても,この者によって遺言の内容が左右されたり,遺言者が自己の真意に基づいて遺言をすることを妨げられたりするなど…

 第三者との間で会社の営業の移転等に関する協議を行うことなどの差止めを求める仮処分命令の申立てについて保全の必要性を欠くとされた事例

平成16年8月30日最高裁判所第三小法廷決定 裁判要旨 甲社と乙社らとの間で乙社らグループから甲社グループに対する乙社の営業の移転等から成る事業再編等に関して交わされた基本合意書中に,第三者との間で基本合意の目的と抵触し得る取引等に係る協議を行わ…

 傷害致死の事案につき,懲役10年の求刑を超えて懲役15年に処した第1審判決及びこれを是認した原判決が量刑不当として破棄された事例

平成26年7月24日最高裁判所第一小法廷判決 裁判要旨 親による幼児に対する傷害致死の事案において,これまでの量刑の傾向から踏み出し,公益の代表者である検察官の懲役10年の求刑を大幅に超える懲役15年という量刑をすることにつき,具体的,説得的な根…

記載内容が事実に合致しないため公正証書が無効とされた事例

平成6年4月5日最高裁判所第三小法廷判決 裁判要旨 公正証書には、昭和六一年二月一三日に二〇〇〇万円を貸し付けたと記載されているが、実際には、同年二月五日から三月一九日まで(二月一三日を除く。)の間に七回にわたり合計七七八万円余の消費貸借、準消…

執行官が現況調査を行うに当たり目的不動産の現況をできる限り正確に調査すべき注意義務に違反したと認められた事例

平成9年7月15日最高裁判所第三小法廷判決 裁判要旨 一 執行官は、現況調査を行うに当たり、通常行うべき調査方法を採らず、あるいは、調査結果の十分な評価、検討を怠るなど、その調査及び判断の過程が合理性を欠き、その結果、現況調査報告書の記載内容と目…