最高裁判例の勉強部屋:毎日数個の最高裁判例を読む

上告理由を発見するためには常日頃から最高裁判例を読む習慣が有効:弁護士中山知行/富士市/TEL0545-50-9701

2023-01-01から1年間の記事一覧

 普通河川を事実上管理する市が国家賠償法二条一項の責任を負う公共団体にあたるとされた事例

昭和59年11月29日最高裁判所第一小法廷判決 裁判要旨 市内を流れる普通河川について市が法律上の管理権をもたない場合であつても、もと農業用水路であつた右河川が周辺の市街化により都市排水路としての機能を果たすようになり、水量の増加及びヘドロの堆積…

 一般旅券発給拒否処分が理由付記の不備のため違法とされた事例

昭和60年1月22日最高裁判所第三小法廷判決 裁判要旨 一般旅券発給拒否処分の通知書に、発給拒否の理由として、「旅券法一三条一項五号に該当する。」と記載されているだけで、同号適用の基礎となつた事実関係が具体的に示されていない場合には、理由付記とし…

 公正証書の内容となる法律行為の法令違反等に関する公証人の調査義務

平成9年9月4日最高裁判所第一小法廷判決 裁判要旨 公証人は、法律行為についての公正証書を作成するに当たり、聴取した陳述により知り得た事実など自ら実際に経験した事実及び当該嘱託と関連する過去の職務執行の過程において実際に経験した事実を資料として…

起訴状謄本の不送達と公訴時効停止の効力

昭和55年5月12日最高裁判所第二小法廷決定 裁判要旨 刑訴法二五四条一項の規定は、起訴状の謄本が法定の期間内に被告人に送達されなかつたため決定で公訴が棄却される場合にも適用があり、公訴の提起により進行を停止していた公訴時効は、右公訴棄却決定の確…

仮差押された不動産に対し本差押がなされるまでの間に右不動産の所有権が移転した場合と配当要求の効力。

昭和39年9月29日最高裁判所第三小法廷判決 裁判要旨 債権者が債務者所有の不動産に対し仮差押執行をした後、債務者が右不動産の所有権を第三者に譲渡し、その登記を経由した場合において、右仮差押に基づく本差押がなされたときでも、右仮差押の効力の利益を…

女性労働者につき妊娠中の軽易な業務への転換を契機として降格させる事業主の措置の,「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律」9条3項の禁止する取扱いの該当性

平成26年10月23日最高裁判所第一小法廷判決 裁判要旨 女性労働者につき労働基準法65条3項に基づく妊娠中の軽易な業務への転換を契機として降格させる事業主の措置は,原則として「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律」9条…

 売主から委託を受けてマンションの専有部分の販売に関する一切の事務を行っていた宅地建物取引業者に専有部分内に設置された防火戸の操作方法等につき買主に対して説明すべき信義則上の義務があるとされた事例

平成17年9月16日最高裁判所第二小法廷判決 裁判要旨 防火設備の一つとして重要な役割を果たし得る防火戸が室内に設置されたマンションの専有部分の販売に際し,防火戸の電源スイッチが一見してそれとは分かりにくい場所に設置され,それが切られた状態で専有…

離婚に伴う財産分与として金銭の給付をする旨の合意が詐害行為に該当する場合の取消しの範囲  離婚に伴う慰謝料を支払う旨の合意と詐害行為取消権

平成12年3月9日最高裁判所第一小法廷判決 裁判要旨 一 離婚に伴う財産分与として金銭の給付をする旨の合意は、民法七六八条三項の規定の趣旨に反してその額が不相当に過大であり、財産分与に仮託してされた財産処分であると認めるに足りるような特段の事情が…

不法行為に基づく損害賠償請求訴訟の係属によって不当利得返還請求権の消滅時効が中断するとされた事例

平成10年12月17日最高裁判所第一小法廷判決 裁判要旨 金員の着服を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求訴訟において、右着服金員相当額の不当利得返還請求がその時効期間経過後に追加された場合、両請求が、基本的な請求原因事実を同じくする請求であり…

いわゆる明示的一部請求の訴えに係る訴訟において,債権の一部消滅の抗弁に理由があると判断されたため判決において上記債権の総額の認定がされた場合における,残部についての消滅時効の中断

平成25年6月6日最高裁判所第一小法廷判決 裁判要旨 1 数量的に可分な債権の一部についてのみ判決を求める旨を明示した訴えに係る訴訟において,債権の一部が消滅している旨の抗弁に理由があると判断されたため,判決において上記債権の総額の認定がされたと…

株式会社の代表取締役らが当該会社の全株式を売却したことにつき詐欺による取消し又は錯誤による無効が認められないとした原審の判断に違法があるとされた事例

平成16年7月8日最高裁判所第一小法廷判決 裁判要旨 株式会社の代表取締役甲らが容易に現金化が可能な約10億円の純資産を有する当該会社の全株式を合計2億円で売却したことにつき,それが不自然ではないといえるような特段の事情が存在しない上,上記売却…

配当期日に配当異議の申出をしなかった一般債権者が配当を受けた他の債権者に対して不当利得返還請求をすることの可否

平成10年3月26日最高裁判所第一小法廷判決 裁判要旨 配当期日において配当異議の申出をしなかった一般債権者は、配当を受けた他の債権者に対して、その者が配当を受けたことによって自己が配当を受けることができなかった額に相当する金員について不当利得返…

公示送達  控訴の追完が認められた事例

平成4年4月28日最高裁判所第三小法廷判決 裁判要旨 原告が、訴えの目的である移転登記義務の履行について被告と継続的に和解の交渉をし、原告側の譲歩を内容とする和解成立も予想できる状況にありながら、被告から海外渡航により不在である旨告げられた期間…

老人デイサービスセンターの利用者が当該センターの送迎車から降車し着地する際に負傷したという事故が,当該送迎車に係る自動車保険契約の搭乗者傷害特約にいう当該送迎車の運行に起因するものとはいえないとされた事例

平成28年3月4日最高裁判所第二小法廷判決 裁判要旨 老人デイサービスセンターの利用者が当該センターの送迎車から降車し着地する際に負傷したという事故は,(1)当該送迎車の運転を担当した当該センターの職員が降車場所として危険な場所に当該送迎車を停車し…

 婚姻関係が既に破綻している夫婦の一方と肉体関係を持った第三者の他方配偶者に対する不法行為責任の有無

平成8年3月26日最高裁判所第三小法廷判決 裁判要旨 甲の配偶者乙と第三者丙が肉体関係を持った場合において、甲と乙との婚姻関係がその当時既に破綻していたときは、特段の事情のない限り、丙は、甲に対して不法行為責任を負わない。 https://www.courts.go.…

遺言無効確認訴訟における確認の利益の判断にあたり原告の相続分が生前贈与等によりなくなるか否かを考慮することの可否

昭和56年9月11日最高裁判所第二小法廷判決 裁判要旨 一 遺言無効確認訴訟における確認の利益の存否を判断するにあたつては、原則として、原告の相続分が被相続人から受けた生前贈与等によりなくなるか否かを考慮すべきものではない。二 単に相続分及び遺産分…

外国国家の私法的ないし業務管理的な行為と民事裁判権の免除

平成18年7月21日最高裁判所第二小法廷判決 裁判要旨 1 外国国家は,主権的行為以外の私法的ないし業務管理的な行為については,我が国による民事裁判権の行使が当該外国国家の主権を侵害するおそれがあるなど特段の事情がない限り,我が国の民事裁判権に服…

 不真正連帯債務者中の一人と債権者との間の訴訟において相殺を認めた確定判決の他の債務者に対する効力

昭和53年3月23日最高裁判所第一小法廷判決 裁判要旨 不真正連帯債務者中の一人と債権者との間で右債務者の反対債権をもつてする相殺を認める判決が確定しても、右判決の効力は他の債務者に及ぶものではない。 https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/…

 宗教法人の所有する土地の明渡しを求める訴えが,法律上の争訟に当たらず,不適法とされた事例

平成21年9月15日最高裁判所第三小法廷判決 裁判要旨 宗教法人がその所有する土地の明渡しを求める訴えは,請求の当否を決する前提問題となっている占有者である住職に対する擯斥処分の効力を判断するために,宗教上の教義ないし信仰の内容に立ち入って審理,…

取締役等を選任する甲株主総会決議の不存在確認請求に同決議が存在しないことを理由とする後任取締役等の選任に係る乙株主総会決議の不存在確認請求が併合されている場合における先の決議の存否確認の利益

平成11年3月25日最高裁判所第一小法廷判決 裁判要旨 取締役等を選任する甲株主総会決議の不存在確認請求に、同決議が存在しないことを理由とする後任取締役等の選任に係る乙株主総会決議の不存在確認請求が併合されている場合には、後の決議がいわゆる全員出…

恐喝未遂被告事件についてした判決等に対する非常上告事件(宣告された量刑と判決書記載の量刑が異なる事例)

平成17年11月1日最高裁判所第三小法廷判決 判示事項 宣告内容と判決書の記載が異なる第1審判決等に対する非常上告 https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/869/057869_hanrei.pdf 記録によれば,第1審の大阪地方裁判所は,平成16年7月20日,上…

 被害者を殺害した加害者が被害者の相続人において被害者の死亡の事実を知り得ない状況を殊更に作出したため相続人がその事実を知ることができなかった場合における上記殺害に係る不法行為に基づく損害賠償請求権と民法724条後段の除斥期間

平成21年4月28日最高裁判所第三小法廷判決 裁判要旨 被害者を殺害した加害者が被害者の相続人において被害者の死亡の事実を知り得ない状況を殊更に作出し,そのために相続人はその事実を知ることができず,相続人が確定しないまま上記殺害の時から20年が経…

抗告事件を終了させることを合意内容に含む裁判外の和解と抗告の利益

平成23年3月9日最高裁判所第三小法廷決定 裁判要旨 抗告人と相手方との間において,抗告後に,抗告事件を終了させることを合意内容に含む裁判外の和解が成立した場合には,当該抗告は,抗告の利益を欠く。 https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/152…

金銭債務の担保として既発生債権及び将来債権を一括して譲渡するいわゆる集合債権譲渡担保契約における債権譲渡の第三者に対する対抗要件

平成13年11月22日最高裁判所第一小法廷判決 裁判要旨 甲が乙に対する金銭債務の担保として,甲の丙に対する既に生じ,又は将来生ずべき債権を一括して乙に譲渡することとし,乙が丙に対して担保権実行として取立ての通知をするまでは甲に譲渡債権の取立てを…

事前求償権を被保全債権とする仮差押えと事後求償権の消滅時効の中断

平成27年2月17日最高裁判所第三小法廷判決 裁判要旨 事前求償権を被保全債権とする仮差押えは,事後求償権の消滅時効をも中断する効力を有する。 https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/862/084862_hanrei.pdf 1 原審の適法に確定した事実関係の概…

殺人罪の共同正犯の訴因において実行行為者が被告人と明示された場合に訴因変更手続を経ることなく実行行為者が共犯者又は被告人あるいはその両名であると択一的に認定したことに違法はないとされた事例

平成13年4月11日最高裁判所第三小法廷決定 裁判要旨 1 殺害の日時・場所・方法の判示が概括的なものである上,実行行為者の判示が「A又は被告人あるいはその両名」という択一的なものであっても,その事件が被告人とAの2名の共謀による犯行であるときに…

消防署職員の消火活動が不十分なため残り火が再燃して火災が発生した場合と失火ノ責任ニ関スル法律の適用の有無

平成元年3月28日最高裁判所第三小法廷判決 裁判要旨 消防署職員の消火活動が不十分なため残り火が再燃して火災が発生した場合における公共団体の損害賠償責任については、失火ノ責任ニ関スル法律の適用がある。 https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_j…

建築会社の担当者が顧客に対し融資を受けて顧客所有地に容積率の制限の上限に近い建物を建築した後にその敷地の一部売却により返済資金を調達する計画を提案した際に上記計画には建築基準法にかかわる問題があることを説明しなかった点に説明義務違反があるとされた事例

平成18年6月12日最高裁判所第一小法廷判決 裁判要旨 1 建築会社の担当者が,顧客に対し,銀行から融資を受けて顧客所有地に容積率の制限の上限に近い建物を建築した後,敷地として建築確認を受けた土地の一部を売却することにより融資の返済資金を調達する…

勤務割における勤務予定日につき年次休暇の時季指定がされた場合に休暇の利用目的を考慮して勤務割変更の配慮をせずに時季変更権を行使することの許否

昭和62年7月10日最高裁判所第二小法廷判決 裁判要旨 勤務割における勤務予定日につき年次休暇の時季指定がされた場合であつても、使用者が、通常の配慮をすれば勤務割を変更して代替勤務者を配置することが可能であるときに、休暇の利用目的を考慮して勤務割…

民事執行法九〇条六項にいう執行裁判所に対する配当異議の訴えを提起したことの証明

平成6年12月6日最高裁判所第三小法廷判決 裁判要旨 民事執行法九〇条六項にいう執行裁判所に対する配当異議の訴えを提起したことの証明は、配当異議の届出をした者が、自らの責任において、法定の期間内に右訴えを提起したことを執行裁判所に対してすること…