最高裁判例の勉強部屋:毎日数個の最高裁判例を読む

上告理由を発見するためには常日頃から最高裁判例を読む習慣が有効:弁護士中山知行/富士市/TEL0545-50-9701

2023-07-01から1ヶ月間の記事一覧

 不動産売買仲介の依頼が合意解除された場合における不動産取引仲介業者の報酬請求権。

昭和39年7月16日最高裁判所第一小法廷判決 裁判要旨 不動産取引仲介業者に対する不動産売買仲介の依頼が合意解除された後、当事者間の直接取引により右不動産を目的とする売買契約が成立した場合においても、右業者の仲介と当該売買契約成立との間に因果関係…

元請企業につき下請企業の労働者に対する安全配慮義務が認められた事例

平成3年4月11日最高裁判所第一小法廷判決 裁判要旨 下請企業の労働者が元請企業の作業場で労務の提供をするに当たり、元請企業の管理する設備工具等を用い、事実上元請企業の指揮監督を受けて稼働し、その作業内容も元請企業の従業員とほとんど同じであった…

道路を一般交通の用に供するために管理している地方公共団体が当該道路を構成する敷地について占有権を有する場合

平成18年2月21日最高裁判所第三小法廷判決 裁判要旨 地方公共団体が,道路を一般交通の用に供するために管理しており,その管理の内容,態様によれば,社会通念上,当該道路が当該地方公共団体の事実的支配に属するものというべき客観的関係にあると認められ…

金銭債権の数量的一部請求訴訟で敗訴した原告が残部請求の訴えを提起することの許否

平成10年6月12日最高裁判所第二小法廷判決 裁判要旨 金銭債権の数量的一部請求訴訟で敗訴した原告が残部請求の訴えを提起することは、特段の事情がない限り、信義則に反して許されない。 https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/616/052616_hanrei.pd…

第1次上告審判決 =最高裁平成19年7月6日第二小法廷判決にいう「建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵」の意義

平成23年7月21日最高裁判所第一小法廷判決 裁判要旨 最高裁平成19年7月6日第二小法廷判決にいう「建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵」とは,居住者等の生命,身体又は財産を危険にさらすような瑕疵をいい,建物の瑕疵が,居住者等の生命,身体又は…

 使用者が労働者に対し個別的同意なしにいわゆる在籍出向を命ずることができるとされた事例

平成15年4月18日最高裁判所第二小法廷判決 裁判要旨 出向命令の内容が,使用者が一定の業務を協力会社に業務委託することに伴い,委託される業務に従事していた労働者に対していわゆる在籍出向を命ずるものであって,就業規則及び労働協約には業務上の必要に…

抵当権の実行に基づく土地の買受人が当該土地の短期賃貸借の賃借人に対してした将来の明渡しを求める訴えが適法とされた事例

平成3年9月13日最高裁判所第二小法廷判決 裁判要旨 土地の短期賃貸借契約の締結が執行妨害の意図を含むものであって、その期間満了に当たって、右賃貸借の賃借人が種々の妨害工作をしないとの保障もないなど判示の事実関係の下においては、抵当権の実行に基…

任意同行を求めるため被疑者を職務質問の現場に長時間違法に留め置いたとしてもその後の強制採尿手続により得られた尿の鑑定書の証拠能力は否定されないとされた事例

平成6年9月16日最高裁判所第三小法廷決定 裁判要旨 一 身柄を拘束されていない被疑者を採尿場所へ任意に同行することが事実上不可能であると認められる場合には、いわゆる強制採尿令状の効力として、採尿に適する最寄りの場所まで被疑者を連行することができ…

代表取締役の職務執行停止及び職務代行者選任の仮処分がされた場合にその本案訴訟において会社を代表すべき者

昭和59年9月28日最高裁判所第二小法廷判決 裁判要旨 株主総会における取締役選任決議の無効確認請求訴訟を本案とする代表取締役の職務執行停止及び職務代行者選任の仮処分がされた場合に、本案訴訟において会社を代表すべき者は、職務の執行を停止された代表…

離婚に伴う慰謝料や財産分与を支払う旨の合意と詐害行為取消権

平成12年3月9日最高裁判所第一小法廷判決 裁判要旨 一 離婚に伴う財産分与として金銭の給付をする旨の合意は、民法七六八条三項の規定の趣旨に反してその額が不相当に過大であり、財産分与に仮託してされた財産処分であると認めるに足りるような特段の事情が…

 当事者間の個人的な事情の変更と借地法一二条一項の規定による賃料額の増減の請求の可否

平成5年11月26日最高裁判所第二小法廷判決 裁判要旨 借地法一二条一項の規定により賃料額の増減が請求できる事情の変更には、賃料額決定の重要な要素となっていた当事者間の個人的な事情の変更も、含まれる。 https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/…

民法九〇三条一項により算定されるいわゆる具体的相続分の価額又は割合の確認を求める訴えの適否

平成12年2月24日最高裁判所第一小法廷判決 裁判要旨 民法九〇三条一項により算定されるいわゆる具体的相続分の価額又はその価額の遺産の総額に対する割合の確認を求める訴えは、確認の利益を欠くものとして不適法である。 https://www.courts.go.jp/app/file…

国又は公共団体以外の者の被用者が第三者に加えた損害につき国又は公共団体が国家賠償法1条1項に基づく損害賠償責任を負う場合における使用者の民法715条に基づく損害賠償責任の有無

平成19年1月25日最高裁判所第一小法廷判決 裁判要旨 1 都道府県による児童福祉法27条1項3号の措置に基づき社会福祉法人の設置運営する児童養護施設に入所した児童を養育監護する施設の長及び職員は,国家賠償法1条1項の適用において都道府県の公権力…

建築基準法四二条二項の指定により同条一項の道路とみなされている土地上に設置されたブロック塀の収去請求が許されないとされた事例

平成5年11月26日最高裁判所第二小法廷判決 裁判要旨 建築基準法四二条二項の指定により同条一項の道路とみなされている土地上にブロック塀が設置された場合において、右ブロック塀の設置により既存の通路の幅員が狭められた範囲がブロック二枚分の幅にとどま…

 判決の基本となる口頭弁論に関与していない裁判官が判決をした裁判官として署名押印していることを理由に上告裁判所が原判決を破棄する場合における口頭弁論の要否

平成19年1月16日最高裁判所第三小法廷判決 裁判要旨 上告裁判所は,判決の基本となる口頭弁論に関与していない裁判官が判決をした裁判官として署名押印していることを理由として原判決を破棄する場合には,必ずしも口頭弁論を経ることを要しない。 https://w…

被相続人の占有により取得時効が完成した場合において共同相続人の1人が取得時効を援用することができる限度

平成13年7月10日最高裁判所第三小法廷判決 裁判要旨 被相続人の占有により取得時効が完成した場合において,その共同相続人の1人は,自己の相続分の限度においてのみ取得時効を援用することができる。 https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/432/06…

不法行為により死亡した者が生存していたならば将来受給し得たであろう遺族厚生年金の逸失利益性

平成12年11月14日最高裁判所第三小法廷判決 裁判要旨 不法行為により死亡した者が生存していたならば将来受給し得たであろう遺族厚生年金は、不法行為による損害としての逸失利益に当たらない。 https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/265/052265_ha…

刑法等の一部を改正する法律(平成25年法律第49号)による刑の一部の執行猶予に関する各規定の新設と刑訴法411条5号にいう「刑の変更」

平成28年7月27日最高裁判所第一小法廷決定 裁判要旨 刑法等の一部を改正する法律(平成25年法律第49号)による刑の一部の執行猶予に関する各規定(刑法27条の2ないし27条の7)の新設は,刑訴法411条5号にいう「刑の変更」に当たらない。 https…

特定の種類の商品先物取引について差玉向かいを行っている商品取引員が,専門的な知識を有しない委託者との間で締結した商品先物取引委託契約上,委託者に対して負う説明義務及び通知義務

平成21年7月16日最高裁判所第一小法廷判決 裁判要旨 特定の種類の商品先物取引について差玉向かいを行っている商品取引員が専門的な知識を有しない委託者との間で商品先物取引委託契約を締結した場合,商品取引員は,上記委託契約上,商品取引員が差玉向かい…

当事者双方不出頭の口頭弁論期日において弁論を終結するに際し、裁判長が法廷において判決言渡期日を指定し、これを告知する方法としてその言渡をしたときは、当事者に対してその効力を生じ、更に右期日に出頭すべき旨の呼出状を送達することを要しない。

昭和56年3月20日最高裁判所第二小法廷判決 裁判要旨 一 当事者双方不出頭の口頭弁論期日において弁論を終結するに際し、裁判長が法廷において判決言渡期日を指定し、これを告知する方法としてその言渡をしたときは、当事者に対してその効力を生じ、更に右期…

共同抵当権の目的不動産が同一の物上保証人の所有に属する場合と後順位抵当権者の代位

平成4年11月6日最高裁判所第二小法廷判決 裁判要旨 共同抵当権の目的たる甲・乙不動産が同一の物上保証人の所有に属する場合において、甲不動産の代価のみを配当するときは、甲不動産の後順位抵当権者は、民法三九二条二項後段の規定に基づき、先順位の共同…

 賃貸土地の所有者がその所有権とともにする賃貸人たる地位の譲渡と賃借人の承諾の要否

昭和46年4月23日最高裁判所第二小法廷判決 裁判要旨 賃貸借の目的となつている土地の所有者が、その所有権とともに賃貸人たる地位を他に譲渡する場合には、賃貸人の義務の移転を伴うからといつて、特段の事情のないかぎり、賃借人の承諾を必要としない。 htt…

被害者を失神させた上自動車ごと海中に転落させてでき死させようとした場合につき被害者を失神させる行為を開始した時点で殺人罪の実行の着手があるとされた事例

平成16年3月22日最高裁判所第一小法廷決定 裁判要旨 1 クロロホルムを吸引させて失神させた被害者を自動車ごと海中に転落させてでき死させようとした場合において,クロロホルムを吸引させて失神させる行為が自動車ごと海中に転落させる行為を確実かつ容易…

人訴第四条は、後見監督人または後見人が禁治産者の法定代理人としてその離婚訴訟を遂行することを認めたものではなく、その職務上の地位に基き禁治産者のため当事者として右訴訟を遂行しうることを認めた規定と解すべきである。

昭和33年7月25日最高裁判所第二小法廷判決 裁判要旨 一 人訴第四条は、後見監督人または後見人が禁治産者の法定代理人としてその離婚訴訟を遂行することを認めたものではなく、その職務上の地位に基き禁治産者のため当事者として右訴訟を遂行しうることを認…

既に弁済期にある自働債権と弁済期の定めのある受働債権とが相殺適状にあるというための要件

平成25年2月28日最高裁判所第一小法廷判決 裁判要旨 1 既に弁済期にある自働債権と弁済期の定めのある受働債権とが相殺適状にあるというためには,受働債権につき,期限の利益を放棄することができるというだけではなく,期限の利益の放棄又は喪失等により…

入会部落民全員が、その総有に属する土地について、入会権者として登記の必要に迫られ、単に登記の便宜から、右部落民の一部の者のために売買による所有権移転登記を経由した場合には、民法第94条第2項の適用または類推適用がない。

昭和43年11月15日最高裁判所第二小法廷判決 裁判要旨 入会部落民全員が、その総有に属する土地について、入会権者として登記の必要に迫られ、単に登記の便宜から、右部落民の一部の者のために売買による所有権移転登記を経由した場合には、民法第九四条第二…

間接事実についての自白の拘束力

昭和41年9月22日最高裁判所第一小法廷判決 裁判要旨 いわゆる間接事実についての自白は、自白した当事者を拘束しない。 https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/988/053988_hanrei.pdf 上告人の父Dの被上告人らに対する三〇万円の貸金債権を相続によ…

内縁の夫の運転する自動車に同乗中に第三者の運転する自動車との衝突事故により傷害を負った内縁の妻が第三者に対して損害賠償を請求する場合にその賠償額を定めるに当たり内縁の夫の過失を被害者側の過失として考慮することの可否

平成19年4月24日最高裁判所第三小法廷判決 裁判要旨 内縁の夫が内縁の妻を同乗させて運転する自動車と第三者が運転する自動車とが衝突し,それにより傷害を負った内縁の妻が第三者に対して損害賠償を請求する場合において,その損害賠償額を定めるに当たって…

複数の加害者の過失及び被害者の過失が競合する一つの交通事故においていわゆる絶対的過失割合を認定することができる場合における過失相殺の方法と加害者らの賠償責任

平成15年7月11日最高裁判所第二小法廷判決 裁判要旨 複数の加害者の過失及び被害者の過失が競合する一つの交通事故において,その交通事故の原因となったすべての過失の割合(いわゆる絶対的過失割合)を認定することができるときには,絶対的過失割合に基づ…

主位的請求を棄却し予備的請求を認容した第一審判決に対し第一審被告のみが控訴した場合と控訴審の審判の対象

昭和58年3月22日最高裁判所第三小法廷判決 裁判要旨 主位的請求を棄却し予備的請求を認容した第一審判決に対し、第一審被告のみが控訴し、第一審原告が控訴も附帯控訴もしない場合には、主位的請求に対する第一審の判断の当否は、控訴審の審判の対象とはなら…