最高裁判例の勉強部屋:毎日数個の最高裁判例を読む

上告理由を発見するためには常日頃から最高裁判例を読む習慣が有効:弁護士中山知行/富士市/TEL0545-50-9701

2023-07-01から1ヶ月間の記事一覧

 借地上の建物の賃借人と地代の弁済についての利害関係の有無

昭和63年7月1日最高裁判所第二小法廷判決 裁判要旨 借地上の建物の賃借人は、地代の弁済について法律上の利害関係を有する。 https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/367/062367_hanrei.pdf 上告代理人及び上告補助参加人代理人の上告理由第一点につ…

家庭裁判所が民法941条1項の規定に基づき財産分離を命ずることができる場合

平成29年11月28日最高裁判所第三小法廷決定 裁判要旨 家庭裁判所は,相続人がその固有財産について債務超過の状態にあり又はそのような状態に陥るおそれがあることなどから,相続財産と相続人の固有財産とが混合することによって相続債権者又は受遺者がその…

担保不動産競売事件の期間入札において,執行官が,最高の価額で買受けの申出をした入札人の入札を誤って無効と判断し,他の者を最高価買受申出人と定めて開札期日を終了した場合に,執行裁判所等が執るべき措置

平成22年8月25日最高裁判所第一小法廷決定 裁判要旨 1 担保不動産競売事件の期間入札において,執行官が,最高の価額で買受けの申出をした入札人の入札を誤って無効と判断し,他の者を最高価買受申出人と定めて開札期日を終了した場合には,執行裁判所は,…

保全すべき権利が発令時から存在しなかったものと本案訴訟の判決で判断され,仮処分命令が事情の変更により取り消された場合において,当該仮処分命令の保全執行としてされた間接強制決定に基づき取り立てられた金銭につき,不当利得返還請求をすることができるか

平成21年4月24日最高裁判所第二小法廷判決 裁判要旨 仮処分命令における保全すべき権利が,本案訴訟の判決において,当該仮処分命令の発令時から存在しなかったものと判断され,このことが事情の変更に当たるとして当該仮処分命令を取り消す旨の決定が確定し…

 土地の売買契約の買主が売主に対し債務の履行を求めるための訴訟の提起等に係る弁護士報酬を債務不履行に基づく損害賠償として請求することの可否

令和3年1月22日最高裁判所第三小法廷判決 裁判要旨 土地の売買契約の買主は,当該売買契約において売主が負う土地の引渡しや所有権移転登記手続をすべき債務の履行を求めるための訴訟の提起・追行又は保全命令若しくは強制執行の申立てに関する事務を弁護士…

本訴の提起が不法行為に当たることを理由とする反訴について,本訴に係る請求原因事実と相反することとなる本訴原告自らが行った事実を積極的に認定しながら,本訴の提起に係る不法行為の成立を否定した原審の判断に違法があるとされた事例

平成22年7月9日最高裁判所第二小法廷判決 裁判要旨 本訴の提起が不法行為に当たることを理由とする反訴について,本訴に係る請求原因事実と相反することとなる本訴原告自らが行った事実を積極的に認定しながら,本訴原告において記憶違いや通常人にもあり得…

法律上の原因なく代替性のある物を利得した受益者が利得した物を第三者に売却処分した場合に負う不当利得返還義務の内容

平成19年3月8日最高裁判所第一小法廷判決 裁判要旨 法律上の原因なく代替性のある物を利得した受益者は,利得した物を第三者に売却処分した場合には,損失者に対し,原則として,売却代金相当額の金員の不当利得返還義務を負う。 https://www.courts.go.jp/a…

監護親に対し非監護親が子と面会交流をすることを許さなければならないと命ずる審判に基づき間接強制決定をすることができるとされた事例

平成25年3月28日最高裁判所第一小法廷決定 裁判要旨 1 監護親に対し非監護親が子と面会交流をすることを許さなければならないと命ずる審判において,面会交流の日時又は頻度,各回の面会交流時間の長さ,子の引渡しの方法等が具体的に定められているなど監…

 仮差押命令により保全される債権の範囲

平成24年2月23日最高裁判所第一小法廷判決 裁判要旨 仮差押命令は,当該命令に表示された被保全債権と異なる債権についても,これが上記被保全債権と請求の基礎を同一にするものであれば,その実現を保全する効力を有する。 https://www.courts.go.jp/app/fi…

 控訴審における謀議の認定手続に不意打ちの違法があるとされた事例

昭和58年12月13日最高裁判所第三小法廷判決 裁判要旨 三月一二日から一四日までの謀議への関与を理由にハイジヤツクの共謀共同正犯として起訴された被告人につき、一三日及び一四日の謀議とりわけ一三日夜の第一次謀議への関与を重視してその刑責を肯定した…

 和解調書に建物収去の条項がある場合と建物収去の訴の利益

昭和42年11月30日最高裁判所第一小法廷判決 裁判要旨 和解調書に建物を収去すべき旨の条項があつても、建物収去のための債務名義としてその内容に疑義があるときは、さらに建物収去の訴を提起する利益がある。 https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp…

相続人が相続開始後相続放棄前に相続債権の取立をしてこれを収受領得した場合と単純承認の成否

昭和37年6月21日最高裁判所第一小法廷判決 裁判要旨 相続人が相続開始後、相続放棄前に相続債権の取立をして、これを収受領得した場合には、民法第九二一条第一号にいわゆる相続財産の一部を処分した場合に該当し、相続の単純承認をしたものとみなされる。 h…

 既に発せられた仮差押命令と同一の被保全債権に基づき異なる目的物に対し更に仮差押命令の申立てをすることの許否

平成15年1月31日最高裁判所第二小法廷決定 裁判要旨 特定の目的物について既に仮差押命令を得た債権者は,これと異なる目的物について更に仮差押えをしなければ,金銭債権の完全な弁済を受けるに足りる強制執行をすることができなくなるおそれがあるとき,又…

外国裁判所の判決に記載がない利息を付加して執行判決をすることができる場合

平成9年7月11日最高裁判所第二小法廷判決 裁判要旨 外国裁判所の判決に記載がない利息であっても、当該外国の法制上、判決によって支払を命じられた金員に付随して発生し、執行することができるとされている場合には、これを付加して執行判決をすることがで…

遺産分割協議と詐害行為取消権

平成11年6月11日最高裁判所第二小法廷判決 裁判要旨 共同相続人の間で成立した遺産分割協議は、詐害行為取消権行使の対象となる。 https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/217/052217_hanrei.pdf 一 原審の適法に確定した事実関係の概要は、次のとお…

先取特権者による物上代位権行使の目的となる債権について一般債権者が差押又は仮差押の執行をしたのちの先取特権者による物上代位権の行使

昭和60年7月19日最高裁判所第二小法廷判決 裁判要旨 一 先取特権者による物上代位権行使の目的となる債権について一般債権者が差押又は仮差押の執行をしたにすぎないときは、そののちに先取特権者が右債権に対し物上代位権を行使することを妨げない。 二 転…

無期契約労働者と有期契約労働者との間で基本給の金額が異なるという労働条件の相違の一部が労働契約法(平成30年法律第71号による改正前のもの)20条にいう不合理と認められるものに当たるとした原審の判断に違法があるとされた事例

令和5年7月20日最高裁判所第一小法廷判決 裁判要旨 無期契約労働者と有期契約労働者との間で基本給の金額が異なるという労働条件の相違の一部が労働契約法(平成30年法律第71号による改正前のもの)20条にいう不合理と認められるものに当たるとした原…

離婚訴訟における財産分与の裁判と不利益変更禁止の原則

平成2年7月20日最高裁判所第二小法廷判決 裁判要旨 離婚訴訟において、財産分与を命じた判決に対して控訴の申立てがされた場合、財産分与に関する裁判については、いわゆる不利益変更禁止の原則の適用はない。 https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp…

物の引渡請求に対する留置権の抗弁を認容する場合においてその被担保債権の支払義務者が第三者であるときの判決主文

昭和47年11月16日最高裁判所第一小法廷判決 裁判要旨 一、甲所有の物を買受けた乙が、売買代金を支払わないままこれを丙に譲渡した場合には、甲は、丙からの物の引渡請求に対して、未払代金債権を被担保債権とする留置権の抗弁権を主張することができる。二…

 宣誓無能力者が宣誓のうえした証言の効力。

昭和40年10月21日最高裁判所第一小法廷判決 裁判要旨 民訴法第二八九条により宣誓をさせることのできない者が宣誓のうえした証言であつても、裁判所は、これを証拠として採用することができる。 https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/885/053885_ha…

 店舗の賃借人が賃貸人の修繕義務の不履行により被った営業利益相当の損害について,賃借人が損害を回避又は減少させる措置を執ることができたと解される時期以降に被った損害のすべてが民法416条1項にいう通常生ずべき損害に当たるということはできないとされた事例(重要)

平成21年1月19日最高裁判所第二小法廷判決 裁判要旨 ビルの店舗部分を賃借してカラオケ店を営業していた賃借人が,同店舗部分に発生した浸水事故に係る賃貸人の修繕義務の不履行により,同店舗部分で営業することができず,営業利益相当の損害を被った場合に…

階層的に構成されている暴力団の下部組織における対立抗争においてその構成員がした殺傷行為が民法715条1項にいう「事業ノ執行ニ付キ」した行為に当たるとされた事例

平成16年11月12日最高裁判所第二小法廷判決 裁判要旨 1 階層的に構成されている暴力団が,その威力をその暴力団員に利用させることなどを実質上の目的とし,下部組織の構成員に対しても同暴力団の威力を利用して資金獲得活動をすることを容認していたなど判…

特定の者について新聞報道等により犯罪の嫌疑の存在が広く知れ渡っていたこととその者が当該犯罪を行ったと公表した者において右のように信ずるについての相当の理由

平成9年9月9日最高裁判所第三小法廷判決 裁判要旨 一 特定の事実を基礎とする意見ないし論評の表明による名誉毀損について、その行為が公共の利害に関する事実に係り、その目的が専ら公益を図ることにあって、表明に係る内容が人身攻撃に及ぶなど意見ないし…

新会社が旧会社と法人格を異にするとの実体法上および訴訟法上の主張が信義則に反し許されないとされた事例

昭和48年10月26日最高裁判所第二小法廷判決 裁判要旨 株式会社の代表取締役が、会社が賃借している居室の明渡し、延滞賃料等の債務を免れるために、会社の商号を変更したうえ、旧商号と同一の商号を称し、その代表取締役、監査役、本店所在地、営業所、什器…

預託金会員制のゴルフクラブが民訴法29条にいう「法人でない社団」に当たるとされた事例

平成14年6月7日最高裁判所第二小法廷判決 裁判要旨 預託金会員制のゴルフクラブにおいて,多数決の原則が行われ,構成員の変更にかかわらず団体そのものが存続し,規約により代表の方法,総会の運営等が定められていること,同クラブには,固定資産又は基本…

誤ってした併合罪関係にある事実についての訴因変更請求と公訴時効停止の効力

平成18年11月20日最高裁判所第三小法廷決定 裁判要旨 誤って併合罪関係にある事実を追加する内容の訴因変更請求をした場合,検察官が訴因変更請求書を裁判所に提出した時点から,その請求に係る事実について公訴時効の進行が停止する。 https://www.courts.g…

訴訟の目的である金銭債権の数量的な一部に対応する訴え提起の手数料につき訴訟上の救助を付与する決定が確定した場合において,請求が上記数量的な一部に減縮された後の訴えを却下することの許否

平成27年9月18日最高裁判所第二小法廷判決 裁判要旨 金銭債権の支払を請求する訴えの提起時にされた訴訟上の救助の申立てに対し,当該債権の数量的な一部について勝訴の見込みがないとはいえないことを理由として,その部分に対応する訴え提起の手数料につき…

賭博債権の譲渡を異議なく承諾した債務者が右債権の譲受人に対して賭博契約の公序良俗違反による無効を主張することの可否

平成9年11月11日最高裁判所第三小法廷判決 裁判要旨 賭博の勝ち負けによって生じた債権が譲渡された場合においては、右債権の債務者が異議をとどめずに右債権譲渡を承諾したときであっても、債務者に信義則に反する行為があるなどの特段の事情のない限り、債…

 再抗弁に対する判断の遺脱が上告理由としての理由不備に当たらないとされた事例

平成11年6月29日最高裁判所第三小法廷判決 裁判要旨 抗弁をいれながらこれに対する再抗弁を摘示せずその判断を遺脱した原判決の違法は、上告理由としての理由不備に当たらない。しかし、判断の遺脱によって、原判決には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令…

詐害行為取消しによる受益者の取消債権者に対する受領済みの金員相当額の支払債務が履行遅滞となる時期

平成30年12月14日最高裁判所第二小法廷判決 裁判要旨 詐害行為取消しによる受益者の取消債権者に対する受領済みの金員相当額の支払債務は,履行の請求を受けた時に遅滞に陥る。 https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/184/088184_hanrei.pdf 1 本件…